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ツナさんと他二人組みが如何するか話し合っているのを確認後、私はお兄ちゃんにそっと駆け寄った。


「・・・本気?」
「勿論」
「煙草の人と、黒髪の人は戦えそうだけど・・・茶髪の人は、戦えるの?」
「・・・彼ね、面白いんだ」
「?」
「強かったり弱かったり。ある意味一番咬み殺したいよ」
「お兄ちゃん・・・」


少し責める様に呼ぶと、くす、と笑われた。
そのお兄ちゃんの笑い方は、多分、生まれてからずっと一緒に居た私にしか判らないものだから、多分回りの彼らには気付かれないと思う。この笑い方はレアだなぁ。お兄ちゃん、本当に機嫌がいい。


「大丈夫だよ、澪に免じて手加減―――」
「へー、お前が暴れん坊主か」


あ、機嫌が斜め四十五度に急降下しちゃった。
お兄ちゃんの、多分「手加減してあげる」と続けようとしたのだろう言葉を遮ったひょろりとした台詞は、さっきの酔っ払ったドクターのものだった。すすすとお兄ちゃんに近寄る彼は、ちらちらと私に視線を向けてくる。
その視線がすっごい気持ち悪くて、私は顔を顰めてお兄ちゃんの学ランの裾を握り、少しだけ隠れさせてもらう。お兄ちゃんは無言のままでドクターに冷たい視線を向けていた。
露骨に『近寄るな』オーラを発しているにも拘らず、ドクターはニヤニヤと薄笑いを浮かべ、お兄ちゃんに馴れ馴れしく続ける。


「お前の妹ちゃん、俺にく」
「消えろ。」

バキッ!!!

お兄ちゃん、それフライングだよ。
ドクターは在り得ない悲鳴を上げて吹き飛び、桜の根元でぐしゃっと潰れた。今度は猫が尻尾を踏まれた様な悲鳴を上げたけれどやっぱり気にしない。


「アホ」


それを見ていた銀髪少年がぼやいた。
けれど、彼は即座に吹っ飛ばされたドクター・・・基、変態の事なんか忘れてツナさんに振り返り、嬉々とした表情で口を開く。


「十代目、俺が最高の花見場所をゲットして見せますよ!」
「えっ、」


どうやら、最初は彼みたい。
十代目、と言う言葉が気になって首を傾げると、お兄ちゃんがトンファーを握り直すのが見えた。


「澪、あの赤ん坊の傍に行ってて」
「え?」
「煙草を吸ってる彼の武器は爆弾だから。爆発や熱風からは逃れても、破片とか飛んでくると危ないし。赤ん坊の近くが一番安全だからね」
「・・・うん・・・」


少し腑に落ちないながらも、お兄ちゃんが背を軽く押したから行かざるを得なかった。
そっと歩き出すと同時、銀髪の彼がこちらに向き直り、叫ぶ。


「テメーだけは打っ飛ばす!!」


視線は、完全にお兄ちゃんに行ってる。
背後から、お兄ちゃんの呟きが聞こえた。


「何時も真っ直ぐだね。・・・判り易い」


確かに、真っ直ぐだ。
―――真っ直ぐ過ぎて、私が見えていない。ある程度距離が離れているとは言え、私を素通りしている。女だから戦えない、と言う公式が成り立っているんだろうか。だとしたら・・・莫迦だ。正直言って。


「・・・え、あ、あれ?」
「・・・・・・・・・」


ツナさんたちに近寄っていくと(だってリボーン君はツナさんたちの真後ろに居るし)、ツナさんが戸惑った様に声を上げた。隣の黒髪の人はきょとんと私を見ている。
戸惑う二人に代わって私に質問したのが、リボーン君だった。


「如何したんだ?」
「・・・貴方の傍に居ると、安全なんだって」
「成る程な」


言いながら、リボーン君が腰掛けている桜の幹に背を預け、お兄ちゃんたちの闘いを見る事にした。他の二人は未だにきょとんとしているけど、お構いなしに。
―――爆弾、と言うよりはダイナマイトにも見えるそれは、今お兄ちゃんの直ぐ近くに放たれていた。
























さぁ、宴を始めよう。





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