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私と彼らの距離は十メートルほど。近い様で遠いこの距離で、刹那、赤ん坊と目が合った気がした。しかもニッと笑みを浮かべられた気がする。人形の様な容姿をしている為に何を考えているのか判らない所が妙に恐怖をそそった。
―――ところが、ぱちり、と一度瞬きをすると同時に黒いスーツが昔話に出てくる『花咲か爺さん』のコスプレになっている。
(・・・は?)
思わずきょとんと凝視すると同時、ひらり、と白い服が舞った。
桜の幹に隠れていた人物が、姿を表した。
「いやー絶景絶景! 花見ってのはいいね〜♪」
間延びした声には、当然の如く聞きなれた響きは無い。
「っか〜、やだねぇ―――男ばっかっ!」
「Dr.シャマル!?」
「女の子一人に対する男の割合多すぎだ。駄目だな、こりゃあ」
酒瓶を片手に現れたのは、酒に飲まれた男性だった。ドクター、と茶髪の子が呼んでいるからには医者か何かなのだろうか。見えていた白い服は、白衣の裾らしかった。
―――彼らと、この医者は知り合いなのだろうか。一体如何言う接点なのか中々興味深いけれど、医者が発した・・・如何にも女好きそうな発言に私は思わず顔を顰め、視線を彼から逸らせる。
「まだ居やがったのか! このヤブ医者! 変態! スケコマシ!!」
わぉ、言うね銀髪の人。
と思うと同時、今度は赤ちゃんが口を開いた。
「俺が呼んだんだ」
「リボーンも!?」
「オメーらもっと可愛コちゃんたち連れて来い!」
会話が全く噛み合ってないのは私の気の所為なのか。リボーンと呼ばれた赤ちゃんに続き、茶髪の子、その後にドクターが続いたがそれぞれが全く違う会話をしている。
「―――赤ん坊、逢えて嬉しいよ」
お兄ちゃんが少し笑みを深めてリボーン君にそう言うと、彼はさっきの私にした様に、ニッと笑う。
「俺たちも花見がしてーんだ」
「残念だったね、僕らが先だよ。早い者勝ちって言うだろう?」
「・・・後ろの奴、お前の妹だったな。名前は?」
「―――・・・」
お兄ちゃんの“僕ら”と言う言葉に反応して、リボーン君はお兄ちゃんから私に視線を移した。それに習ってか、お兄ちゃんも肩越しに此方を振り返る。お兄ちゃんを見返すと、自分で名乗れ、と目を細めてからまたリボーン君の方を向いた。
私はお兄ちゃんからリボーン君に視線を移し、軽く会釈する。
「・・・雲雀澪、です。始めまして」
「澪か。俺はリボーンだ、ヨロシクな。早速だが、この場所譲ってくれねーか?」
「―――・・・それは、お兄ちゃんが決める事だから」
「そうか」
リボーン君は私にニッと笑うと、そのままお兄ちゃんに向き直った。
「なら、どーだヒバリ。花見の場所をかけてツナが勝負すると言っているぞ」
「なっ! 何で俺の名前出してんだよー!!」
展開に目を白黒させていた茶髪の少年―――ツナ? さんが、リボーン君に抗議する。
一体どんな関係なんだろう。
兄弟、と言うには少しリボーン君が威張っている・・・と言うか、ツナさんかなり弱い。
「ゲーム・・・いいよ、どーせみんな潰すつもりだったしね。―――じゃあ、君たち三人とそれぞれ一対一(サシ)で勝負しよう」
お兄ちゃんの提案に、「え゙、」とツナさんが小さく呟いて。
それでもお兄ちゃんは構わず続けた。聞こえたツナさんの声は無視するらしい。
「お互い、膝を付いたら負けだ」
「ええ!? それって喧嘩〜ッ!?」
頭を抱えて叫んだツナさんに、けれどお兄ちゃんは楽しそうに笑うだけ。訂正する気は更々無いらしい。
私から言わせて貰えば、膝を付けば、と言うその条件をお兄ちゃんが提示したと言う時点で物凄い譲歩だと思う。と同時に、それだけ今はお兄ちゃんの機嫌がいいって言う事を遠回りに言い表している。
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