きらきら
我がサッカー部キャプテンはよくモテる。いやほんとにモテる。憧憬の眼差しを送られることもあれば、恋愛の情も抱かれる。絶大な人気は小さな校舎以外にも波及していて、その中には私も私の両親も含まれている。
「キャプテンって、ほんとよくモテますねえ」
炎天の下、今日もチームオルフェウスはサッカーコートを走り回っている。今はみんな休憩中でベンチにいるけど。いつもどおりマネ業に勤めていたら、ふとそんなことが口を突いて出た。一個上のキャプテンことフィディオ先輩は「そうか?」と汗を拭っているタオルから顔を出す。
「そうですよ。私の親も先輩は気に入ってますから。無口で基本学校関係には無関心なのに、先輩の影響でサッカー部の公的試合は全部見に来てますから」
「応援してくれてるのか、嬉しいな」
「そういうとこですよ先輩」
キャプテンはまたしてもきょとん顔を見せる。これを作ってないというんだからまた凄い。面倒見良いし、ヘマしても怒らないし、優しいし明るいし、サッカー上手だし、かっこいいし、あとかっこいい。うん? キャプテンが好きなのか、って? そりゃあもちろん好きだ。逆にこのチームしかりこの学校しかり、彼を嫌う人なんて会った試しがない。恋愛的な好きではないけど。
「まあ、先輩かっこいいですしモテるのも頷けますな」
「そうかな……」
「後輩たちに連日ラブレター貰ってるじゃないですか」
分かりやすい事例に、キャプテンは納得したふうで押し黙った。確かにキャプテンみたいな人が身近にいたら好きになっちゃうよなあ、わかるよわかる。私もキャプテン推しだからその気持ちわかっちゃう。かっこいいもんね。
「……名前はどう思ってるんだ?」
「先輩のことですか? そりゃもちろん、かっこいいと思ってますよ。この部で先輩をかっこよくないなんて思うメンバーはいませんって。よっ、大将!」
「そうか……。ならよかったよ」
安心したような、それでいて嬉しそうな顔するキャプテン。意図するところが分からなくて「キャプテン?」と呼んでしまった。視線を落としていた彼と目が合う。思わず息を呑んだ。
「名前にはかっこいいと思われたかったから」
うっすらと赤くなった頬。それが暑さからくるものでないことくらい、さすがの私にも理解できる。エマージェンシー、エマージェンシー。キャプテンの可愛いところ見つけちゃいました。あ、やっぱ誰も来ないで。この顔は私だけが知っていたいから。