2023/02/12
「これで良かったの?」
「卒業式と言うのに浮かない顔してどうしたのよ」
「結局言わずじまいだなって。好きだったんでしょ? 十代のこと」
「……ばれていたの」
「解ってるの私くらいなんじゃないかなぁ、多分」
「顔に出ていたかしら」
「いやあ? ただなんとなく、そうなんだろうなーと」
「勘が鋭いのね。羨ましいわ」
「勘が鋭くても儲からないけどね」
「でも望んだ夢は掴めたのでしょう?」
「まだだよ」
「え?」
「掴めるような簡単なものじゃない。足元に近寄れた程度だよ、まだ」
「そう。そうね、これからよね」
「……今どこに居るんだろうねえ、あいつ。南米かな? 北欧かな? 中東かな?」
「さあ。でも、どこに居てもきっと彼は笑っているでしょうね」
「今の明日香みたいに?」
「からかわないの。もう、あなたって人は全く変わらないわね」
「そりゃーね。じゃ、そろそろ行くよ」
「間に合う?」
「全然余裕」
「気を付けてね」
「明日香もね。良い旅路を」
「あなたもね。良い挑戦を」