2022/09/18
窓辺に寄りかかる時、彼女はどこか寂しげな眼差しをする。教室の賑わいの中それは異様に目立って、聞けるはずもないのに僕の目は自然とそちらへ流れてしまう。杏子たちと話す時は寂しげな遠い眼差しは嘘のようにぱっと消えるけど、僕がふいに目線を遣ると、またその眼差しに戻って窓の向こうに耽っている。堪らず声をかけた。
「なにか心配事でもあるの?」
掃除の時間も、終わりが近づくと全体的に空気は緩み、みんなの談笑が飛び交う。僕の声掛けに一瞬驚いたのか目を点にしていた様子の彼女だったけど、いつものようにへらりと笑って肩を竦めた。
「なんでもないよ」
頬を掻きながら苦笑する様に掛ける言葉を見失ってしまい、僕は「そっか」と引き下がるしかできなかった。手に持っていた箒を彼女は攫っていき、慌てて取り返そうとする僕に「戻してくるよ」と言って背中を見せた。ぽつんと残される。誤魔化されたと知って空いた穴に、隙間風が吹き抜ける。