あなたが私の世界でよかった。すっきりとした表情で言ってのける男は、自分もまた誰かの世界であることをわかっちゃいない。そんな優しい瞳で、やわらかな瞼で、こちらを見るな。いっそ女の不祥事がばれたときのような瞳で見ていてくれればよかった。ずっとよかった。ジャーファルはこんな男をすべてとする。かわいそうに、こんな男を世界のすべてにしてしまうなんて。たしかに小さな彼に、言葉を、飯を、服を、家を、腕を、命を、与えてしまったのだけれど。

「ジャーファル、俺に世界だなんて肩書きは大きすぎやしないかい」
「なにを、そうしたのはあなたのくせに」

真面目な顔で返事をする彼は、そういえば生真面目で勤勉な性格であった。

「恨んでいるかい」

問うてみたけれどこれに答えは返らない。悪かったね、と肩をすくめてつげる。彼にはずっと謝ってばかりだ。なにについて謝っているかは俺も彼もわかっちゃいない。ジャーファルの肩を抱いて引き寄せてみた。

「あいしていますよ」

彼が言う。彼は、ジャーファルは生真面目で勤勉な性格だから、愛するように僕を恨むのだろう。生き長らえた世界をやわらかな瞳で憎むのだろう。すまないね、心のなかで唱えた。なにについての言葉かは、俺にも彼にもわからない。


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