君を嫌いだと思った。ひどくひどく嫌いだと思った。君はとても孤高ぶっていて一人ぼっちでただ立っていた。自分を特別なように扱っていて、俺をちっとも見やしないところがとても気に食わなかった。だから俺は君にちょっかいをかけたし、君を手の内に納めて殺してしまおうと思ったんだ。でもできなかった。途中でおそろしくこわくなった。いったい君はなんなのだろうと夜空を見て考えたくらいだ。俺は君を認識した。君という存在を認識した。なのに君というやつは。話しかわるが俺はただの人間だ。ただ人よりも少し性根が悪く、情報を集めることに長けているだけの人間だ。人間は神になりえない。俺はこんな名前をしているけれども、少しやんちゃをして生きているけれども、他の人たちと同じ様に衰弱して死んでいくことは避けられないのである。話を戻そう。そう、君の話しだ。俺は君を殺そうとした。君が死んだらなんだか俺のものになるような気がしたからだ。君が俺のものになると世界を手に治めるような、そんなものと同じ様な気がして。でも君は死なない、殺しても殺しても死なない。俺が君を認識してからいくつかの年が過ぎた。春も冬もきた。年輪は日に日に太く。俺は毎日君を殺そうとする。けれどこわい。君は死なない。なんて、こわい。君は死なない。俺は君が死ぬところが想定できない。もしかしたら君はずっと生きるのではないだろうか。俺を置いて、俺をなくして、俺の知らないところで知らない時間を、ずっと。こわい。君の死が見れない。こわい。なんだかひどく一人ぼっちの気分になる。こわい。

「ねぇ、だからさ、」

はやく死んでよ、俺に殺されてよ。泣きそうな声だった。俺は君を殺すのにこんなにも真面目に必死に取り組んでいるというのに。

「ハッ、知るかよ、テメェが死ね」

君は一笑にふして終わる。ねぇ、わからないかな、君が死ぬ前に俺はきっと死ぬというのに。



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