05 羨ましいなんて思うことすらおこがましいよね
「……い」
「……おい」
「ッおい!名前!聞いてるか?」
『っへ?』
「呆気にとられる気持ちも分からなくもねーが、自己紹介しとけ。」
『も、申し訳ございません、苗字名前です。』
「なんや、固いやっちゃなー。ラブ脅してんねんか?まあ、ええわ、俺は平子真子や。仲良うしてや!」
『は、はあ。』
「脅してねえっつうの。まあ、二番隊出身だし、あそこは上下関係厳しそうなところだしな。」
「二番隊って夜一のところやろ?あいつが厳しいって考えられへんな。」
「まあ、あんたも遠慮せんで飲み。今日は真子の奢りやからかな。」
「ちょ待てやリサ!何勝手に言うとんねん。」
「っハ!ハゲ真子はそれくらいしか出来ひんのやからしゃーないやろ!」
「なんやと、ひよ里!」
「驚いたか、まあ、こんな感じでゆっくり酒を飲むっつうよりドンチャン騒ぎって感じなんだよ。」
『そうなんですか……』
「オメーはあんまり飲み会とか参加するタイプじゃなさそうだしな、一回酒飲んで腹割るっつうのも悪くないぜ。」
『はあ。』
「ほら、名前あんたも飲みぃや。今日は真子の奢りやで。」
「ちょリサ勝手なこと抜かすな言うてんやろ!」
「小さい男やな、これくらい払ったる言うくらい大きな器持っとき。」
「そう言うてなんぼお前らに払わされたと思っとんねん!」
「つべこべ言わず払っとき!」
「ちょひよ里、殴りなや!」
「全く酒くらい静かに飲めねえのかよ。」
「ねーっ!拳西、スイーツはまだ来ないの?早く食ーべーたーい!」
「ピーピーうるせぇ!」
「拳西、君もうるさいよ。」
「ったく、しょうがねえ奴らだな。」
同じような会話をさっき聞いたような気がする。当たり前のように繰り広げられている彼らのこの風景は、彼らにとって日常なのだろう。当たり前のように集まって、馬鹿騒ぎをして、笑っている。一緒に生きているのだ。一緒にいるということが彼らにとって当たり前なのだ。
私が最後に笑ったのはいつだろうか。心の底から楽しいと思えたのはいつだったのだろう。姉が死んでからの私の世界はモノクロで。そんな私は生きてると言えるのだろうか。心臓は動いてる、血は流れてる。けど、私は生きてない。だから目の前で繰り広げられている光景はあまりにも私には眩しすぎて。
彼らは生きているのだ、確かにこの時を。
じゃあ、私は?私はどうなのだろう。周りの人から生きていると思われているのだろうか。皆は私の事を上手く生きてると言うが果たしてそうなのだろうか。出世をすることが幸せだと言うのならば私は幸せなのだろう。けどそれは違うっていうのは分かる。だって、貧乏でも毎日笑って、たまに泣いてそれで大好きな姉と暮らしてたあの頃、私はちゃんと生きていたのだから。
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