03 どっちにも踏み出す勇気なんてないんだけどね

私は真央霊術院を2年で卒業し、入隊と同時に四席の座を手にいれた。
その5年後にはもう七番隊の副隊長という事で、いわゆる天才と言われる道を歩んでいるのだろう。

私自身はそんなにその呼び名にこだわりはないし、むしろ疎ましくおもっているのだが、それ以上に疎ましく思っているのが七番隊の部下たちなのだろう。
七番隊はまあ、昔気質の男たちの集団で天才という呼び名が嫌いなのだろう。
ましてや女が男の上にいるなんて考えられないのだろう。
私だって好きでこの道を選んだんじゃないのに……
一言で言えば、私は七番隊副隊長とは肩書きばかりで、部下たちに認められてないのだ。只でさえいきなりの移動に参ってるのに、さらに人付き合いに悩まされるなんて、ついてないなと思わずため息が出た。

「よう、名前」

口角を上げて向いた先には隊長がいた。

「七番隊には慣れてきたか?」

『だいぶ副隊長業には慣れてきました。』

「まあ、あいつらの事は、気にすんな。すぐにとは言わねえけど時間がたてばなんとかなるだろうよ。」

『ご心配をお掛けして申し訳ございません。』

「そんなに固くなるなって。あ、そういや今夜予定入ってないよな?」

『特にありませんが……』

「いや、今日連れと飲み会があってな。オメーも連れてくと言ってたから良かった良かった。」

『え、』

「まあ、ちょっとうるせえ奴らだけど隊長、副隊長だ。オメーも顔合わせに行っといた方が良いだろ。じゃあ今日の定時後な。」

『……はい。』


七番隊に来て思ったことは人付き合いの面倒臭さだ。
馴れ合う隊風を好まない二番隊と比べ、人との付き合いを大切にする七番隊はいささか私とは合わない。
任されたからには七番隊副隊長をきちんと勤めないといけないと思う半面どこか遠くに逃げ出したい。逃げる勇気なんて私にはないのだけれど。

窓から移る湿気の強い曇り空が私の心模様を表しているみたいで、思わず自嘲的な笑いがこぼれた。

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