9月(2017)

※平子長編の夢主で海燕が副隊長になったばかりの頃で平子と付き合う前です。



「夏休み明けの霊術院で授業?」

「おぅ、どうだ、たまに霊術院に戻って可愛い後輩の顔を拝んでこいよ」

極めて面倒だ。霊術院なんて2年しかいなかったし大した思い入れもない。

「わかりました」

面倒と思いながらも隊長の命に背くわけにいかず引き受ける。ちょうど卒業して5年の月日が流れる。そもそも2年しかいなかったから顔馴染みなんているわけない。適当に話をして帰ればいい。










「それでなんでここに海燕副隊長がいるの?」

「おいおい、ここは霊術院だし俺らは同期だぞ。もうちょっと懐かしいねとか言えねーのかよ。」

「っていうか新人の副隊長2人で何話せるのよ。」

「無視かよ‥‥ 隊長の話だととにかく夏休みボケしてるガキの気を引き締め直すんだと。自分たちが霊術院時代にどういうことをやったのか披露したら喜ぶんじゃないかとか言ってたな」

「ふーん、それなら話が早いじゃない。思ってもないこと話さないといけないのかしらって心配してたし」

「いや、もう少しオブラートに包めよ」

呆れ顔でこちらを見つめてくる海燕を無視して霊術院の学長に挨拶をする。



「本日やって頂きたいのは、」

にこやかな笑顔で話された内容はとてつもない任務だった。









「本当にやるの?」

「いや、もうこんな学生の変装してる時点であとには引けねえよ、」

「潜入して生徒たちの夏休みボケをなくすとか別に副隊長の仕事じゃないでしょ。席官に行かせなさいよ。この変な眼鏡鬱陶しいし嫌なんだけど」

「本当によく総隊長もこんなちんちくりんな依頼を許可したな」

文句をだらだら言ってると静かにしろと六回生に言われる。

「今日は護邸の隊長が来るんだからな」

それは初耳だな、と思い顔をあげると、

「げっ、」

あの苦手な隊長がいる。

「お、平子隊長じゃん」

「よりによって‥‥」

「一応上司だからな、そこ忘れんなよ」

話を聞くと平子隊長の前で剣術を見せるらしい、すごく面倒な仕事だと顔に出てたのだろう。

「お、なんや。自分そないに自信ないんか、ちょォ見せてみィ、」

「げっ、」

「あ、あの!お、俺も見てもらいたいなぁ!」

海燕が急いでフォローをする。もちろん剣術の先生は私達が副隊長だなんて知らない。

「お前たち、霊術院の名に恥じぬようにしっかり取り組め」

なんでこうなったのかよくわからない。他の生徒からしてみたらこんな冴えない眼鏡の剣術なんて見たくないだろう。不満という顔がこちらに向けられる。



海燕が剣術を構える。本来なら正しい構えをしないといけないがあえて我流の構えをする。これは海燕と修行をして1番自分にあったやり方だ。

「おい、女!なんだその構えは!」

6回生が口を出してくる。それを平子隊長が諌め、こちらを見てくる。

海燕がこちらの懐を狙ってくるのがわかり、とっさに後方転回する。
奴の攻撃をかわしつつ、その隙に白打を仕掛ける。

海燕に向かい合えば白打を避けた拍子に眼鏡が外れたらしい。

「なんか木刀じゃまどろっこしいんだよなぁ。斬魄刀あるか?」

「当たり前でしょ。まどろっこしいことはやめて斬り合いにしない?」

隠し持っていた斬魄刀を手にして眼鏡を外す。

「やっぱりそうこないとだろ」


周りがざわつく。

「水天逆巻けて捻花」

「破道の三十三 蒼火墜」

「縛道の六十一 六杖光牢」

一気に動きを封じ込められ、前を向けば大層な呆れ顔の平子隊長が目に入った。

「お前ら何しとんねん、上見てみィ、天井吹っ飛んでるやん」

「‥‥天井吹っ飛んだのは平子隊長が始解したからじゃないですか」

「どっちにしろここの道場ぶっ壊す勢いで自分ら戦うつもりやったやろ。むしろ感謝しィ、被害めっちゃ抑えてやった平子隊長に」

「っつーかいつから俺らって気付いたんすか」

「お前ら向き合った時に霊圧飛ばしすぎや、ほれ見てみィ」

生徒の半分以上倒れてんねん、の一言でようやく我に返る。









「ぶわっかもん!!!任務を完遂しないどころか霊術院の道場を壊して生徒の半分以上を救護室に送るとはお主ら一体何をしとるんじゃ!」

隊首会で盛大に説教を喰らう。

「まぁまぁジィさんそないに怒りなや。そない悪気もなかったんやし。」

「お主もお主じゃ!二人が暴走しないように見張りを頼んだのに壊す直前まで面白がって見てたと報告が上がっとるんじゃぞ!」

総隊長が顔を真っ赤にさせて怒っているのを京楽隊長や浮竹隊長が総隊長を諌めてなんとかその場は収まったが始末書を書かされる羽目になった。もう海燕の誘いには乗らないと固く決意をする。

ふと間の抜けた関西弁で話し掛けられ嫌々ながらも声のする方に顔を向ける。

「やっぱり良い子ちゃんぶっている時よりもそっちの方が全然ええで、」

策にはめられた事に気付き、苦々しい顔が抑えられない。


私はやっぱり、ずかずかと自分の中に入って来るこの男がどうも苦手だと強く思った。

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