32:私たちは操り人形だと知らずに踊ってる

「しっかしよく似てましたよね、黒崎一護って志波副隊長に」

「……まさかね、」

「なんすか?」

「いや、何でもないわ」

あまりにも似てるから血縁関係があるんじゃないか、と言おうと思ったがさすがに突拍子が無さすぎる。霊力が強いとはいえ、彼は人間だ。

「阿散井に勝てるかなぁ、最近めっきりあいつ強くなったし。俺も怪しいかも、」

「新参者の副隊長に負けるならうちの副隊長は務まらないわね」

「冗談じゃないっすか!」

「阿散井に勝てないようだと朽木にも勝てないわよ。まあ現在の力を見ると阿散井の方が上だけど潜在能力を見たらどちらが勝ってもおかしくないんじゃない?」

「おい、てめえ旅禍に会ったのか、」

地下水道から出てきたら、随分と大柄な男が目に入った。

「あら、珍しいじゃない。あんたが率先して護邸の仕事をやるだなんて」

「てめえと無駄話をしに来た訳じゃねーよ、旅禍の居場所を聞きてーんだ、俺は、」

「その旅禍ならきっと今頃、阿散井と戦ってるわよ」

ッチ、先に取られたか、と呟く男を見る。

「なんでてめえは旅禍と戦わなかった?」

「戦時特例も出てないのに易々と斬魄刀を出すわけないでしょ?」

「相変わらず頭が硬ーな、戦いなんて本能からやるもんだろーがよ、」

「面倒なことは嫌いなの、」

そう言い終わる前に大きい光と霊圧が揺れ動くのがわかる。

「良かったわね、旅禍は勝ったみたいよ」

「あぁん?」

瞬歩を使い、懺罪宮に向かう。

「苗字隊長!黒木副隊長!」

「吉良か、」

見れば旅禍の一行は逃げたらしい。そんなことよりも三番隊が懺罪宮付近の管轄だということが気になる。旅禍の侵入を知らせたのも、その後の指示も四十六室からだ。もしかして、藍染たちの手によって四十六室は、

「苗字隊長、ご指示を」

黒木に言われて我に帰る。

「今は阿散井の救助を優先ね、出血量が多すぎるわ。とりあえず建物の中に運びましょう。あたしはここにいて旅禍の様子を探ってるから黒木は総隊長に報告してもらえる?」

「承知いたしたしました」

黒木が瞬歩をする。




近くの建物の中に入り、しばらくすると雛森がやってくる。少し距離を取り、四番隊の上級救助班を手配するために伝令神器で卯の花隊長に頼む。

「…そんな…!」

「…僕が見つけた時にはもう、この状態だったんだ…もう少し早く見つけて僕が戦いに加勢していれば…」

「ううん…そんなの…吉良くんのせいじゃ…」

「…ともかく四番隊に連絡するよ、上級救助班を出して貰おう…」

「その必要は無い」

「ーーー朽木隊長!」

厄介なものが出てきたなぁと柱の影から様子を伺う。

「そ…そんな…阿散井くんは一人で旅禍と戦ったんです…それなのに…」

「言い訳などきかぬ、一人で戦いに臨むということは決して敗北を許されぬということだ。それすら解らぬ愚か者に用など無い。目障りだ、早く連れていけ」

「…ちょ…ちょっと待ってください!!そんな言い方って…」


「まぁまぁ、あんたもそんなに怒らなくてもいいでしょ?」

朽木の肩に手を置けば一睨みさせられる。

「旅禍の力を見るためには必要な戦いよ?どういう戦力で何が武器なのかってあたしたちは知らないわけなんだし。」

「兄は黙ってろ、私の部下だ。」

「旅禍は今回一切始解もせずに阿散井を倒したらしいわよ。これはつまり隊長格と渡り合える可能性もないわけではない。うちの黒木が今、総隊長に報告しているわ。そろそろ戦時特例が出るわね。」

「……」

「そういうわけで一番隊舎に向かうわよ。残念ながらもう四番隊の手配はあたしが勝手にしちゃったの。それに同期が殺られかけて動揺してる女の子に睨み付けるなんてあんた顔がまぁまぁいいから許されてるのかもしれないけどモテないわよ。」

「…余計な世話だ。気が失せた、勝手にしろ。」

手を振り払われ一番隊舎に向かう朽木を見る。

「おーこわ!」

「市丸隊長!」

「何やろね、あの言い方。相変わらず怖いなァ、六番隊長さんは」

「あんたいつから見てたのよ」

「うーん、名前ちゃんが六番隊長さんに絡むところからかなァ、」

「とりあえず死ね、」

「イヅル、僕、殺されてまう。殺される前に早、行こか、ついておいで、イヅル」

「………はい」

「おわー!こりゃ派手にやられやがったな阿散井のヤロー!」

「ふわぁっ!ひ…日番谷くん!!」

「オイオイ、俺もう隊長だぜ?いーのかよ、そんな呼び方で?」

「うるさい!もう!どうして隊長さんたちは皆、足音をたてずに近くにくるのよ!だいたい日番谷君がどうしてーーー…どうしてこんなところにいるの?副官さんも連れずに…」

「……忠告に来たんだよ、三番隊には気を付けな」

「え…?三番隊…?吉良くんのこと…?なんで…?」

「俺の言ってんのは市丸だが吉良もどうだかな、取り敢えず気をつけといて損はないぜ」

「特にーーーー」

「藍染が一人の時は、ってわけ?」

「んだよ、苗字、オメーもいたのか」

「あたしが四番隊を呼んだしずっといたわよ」

日番谷の勘の良さは厄介だな、と思いながらも小さい男を見る。恐らく藍染が仕向けたに違いない。

「雛森も日番谷も気を付けなさいよ、思ったよりも事態は大きくなり始めてるわ。」

警鐘が鳴り響く。

「特に雛森、あんたよ。あんたが一番危ないわ」

「え、苗字隊長?」

本当は詳しく話したいが多分恐らく侵食されているから信じてはもらえないだろう。一番隊舎に向けて瞬歩をする。何年たってもこの警鐘の音は嫌いだ。

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