8月(2017)

「夏の暑さは嫌い」

「‥‥‥‥なんやねん、それ。せやから断りたい言うことかいな」

「現世とか任務でしか行かないし」

「そんなん今時自分だけや!乱菊見てみぃ!洋服とかめっちゃ買っとるやん!」

「現世の服とか嫌いだし松本副隊長の仕事の皺寄せが日番谷隊長に来てるのを見ると現世はあまり良い印象を持ちませんね」

なんやねん、不機嫌なやっちゃなァと真子が口を曲げるのを書類を作りながら見る。これじゃあ埒が明かない。電子機器を取りだしボタンを押し電話をし始めるあたしを真子は不思議そうに見る。

「ああ、雛森副隊長?えぇ、平子隊長ならこちらにいるので早急にお引き取りください。」

「っな、」

他の女の話をされるのは、嫌いだ、










「どいつもこいつも現世の祭りに浮かれやがって、」

「なんつっても黒崎や朽木の妹の影響で話題は現世で持ちっきりっすからね」

「黒木はどうせ祭りに行く相手もいないから残業ね、」

「ひどくねぇっすか!?」

騒がしいのは嫌いだ、浴衣だ洋服だなんて興味がない。

「まぁまぁ、平子隊長も戻ってきたばっかですしようやく再会したんですから、祭りくらい一緒に行ったらどうです?いつまでもへそ曲げてないでね、」

「黒木死ね」

残業を黒木に投げる。

「愛川隊長に挨拶しに行くだけだから」

そう言って瞬歩をすればわざわざこんな祭りの日にねぇ、という声が聞こえる。帰ったらあいつを殴ろうと心に固く決心した。










「平子隊長はこんな日に残業なんですか?」

「誰のせいやと思っとんねん‥‥」

お前が桃に告げ口するからやろ、とやる気がなさそうに書類を片付けてる姿は隊長としてあまり推奨出来るものではない。

「もうええわ、」

戻ってきてからというものの素直になれずにずっとつっけんどんな態度に愛想をつかされたのだろうか。こちらが心の整理が出来てないのにいつだって土足で入ってくるのは相変わらずだ。

「そろそろ暗いしな、」

「は?」

ほれ、と言って渡されたのは紙紐だ。

「お前は昔からやかましいのは嫌いな奴やからなァ、俺は学習してんねん。」

「なんなの紙きれ」

「せっかちなやっちゃなァ、」

「真子に言われたくない」

「ようやくやな、」

「は?」

「名前で読んだの」

平子隊長なんぞ呼びよって、と真子がグチグチ言う。

「まァ、100年待たせたんやからな、」

こっちも長期戦で行くつもりやで、と大好きな笑顔で言う。こういうずるいとこは相変わらずだ、

紙きれに火をつければ綺麗な光が出る。
これもあたしの知らない真子の100年だ、

「綺麗やろ」

舌から覗く貴金属も知らない100年、短くなった髪の毛も知らない100年、

「あ、消えた」

寂しい気持ちが一気に押し寄せる。

「まだまだあるで、」

真子がしゃがんでこちらの顔を覗き、新しいのを渡す。

「せやからそない寂しそうな顔をしなや、」

変わらないものを発見した、

「昔から変わらないね、」

「そない変わってられへんわ、」

髪も切ったしなァ、気にってんねん、と得意気な顔をする。



「似合ってないよ、」

そういえば、はぁっ!どこがやねん!と大きな声で騒ぎ始める。



いつだってあたしの機嫌を取るのは昔から上手いところとか変わってない、少し悔しいけど、

「ありがとう」

「‥‥なんやねん、急に素直になって、腹でも壊した、痛ァ!」

そういうところが大好きだ。

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