31:ふとあなたの残像を見た気がしたの

「ったく相変わらず汚いところね、」

「いやいや、隊長、なんで俺ら地下水道にいるんすか」

「障害物なしで行けて楽じゃない。どうせ旅禍たち懺罪宮に行くでしょ?」

「そういや四番隊を人質に取ってたっすね、助けるんすか?」

「特に助ける理由はないわ、命に別状はなさそうだし」

「ってか声聞こえないっすか?」

「そうね、懺罪宮まで行かなくて済むわ、」



男3人の姿が見える。うち1人はオレンジ頭の死覇装、大きな斬魄刀、

「ーーーー絶対死なせやしねえからな‥‥‥‥ルキア!」

「良い心構えね、あなたが旅禍じゃなければうちの隊に引き抜いてあげたのに」

急にこちらを振り向いてくる。声を掛けるまでは気付かなかったみたいだ。

「ただし声を掛けるまで気付かないようだと白哉と戦うのはきついわよ」

「あれは、七番隊の苗字隊長、」

四番隊の人質が声を発しようやく黒崎一護ともう一人の目に焦りが見える。

「はじめまして、黒崎一護」

「あんた、自己紹介なんてして随分余裕だな、」

「あんたたち3人を殺すことなんて片手で出来るからね、」

黒崎一護の首筋に斬魄刀を当てる。

「別に戦いたくてあなたのところに来たわけじゃないからそんなに警戒しないで、いくつか質問をしに来ただけだから」

「‥‥‥‥」

警戒心がありふれている、これじゃ埒が明かない。

「山田七席、」

「はいっ!」

斬魄刀を山田七席に向けて投げる。

「今あたしの斬魄刀はあなたの人質が持っている。今のあたしはあなたから見てかなり無防備な状態よ」

驚いたようにこちらを見る目はかつての同僚を思い出す。奴はとても海燕に似ている。

「聞きたいことは1つだけ、あなたは浦原喜助を知っている?」

「‥‥‥‥俺の師匠だ、」

「なるほどね、」

荒々しいが的を得てる戦い方の理由がわかる。そして大体予想がつく。浦原さんが朽木ルキアを何かの形で利用していたことと、それが何かしらの手によって邪魔されたということが、

「浦原喜助はあたしの元上司だったの、」

「上司ってあの胡散臭い人がか!」

ひどい言われようだな、と思うが無理もない。

「別にあたしはあんたの味方ではない。あたしにとって都合が悪くなったらあんたを殺す。ただ忠告をしてあげるわ。本当に気を付けないといけないのは五番隊長よ、」

「五番隊って藍染隊長ですか!?そんな、」

「恐らく朽木ルキアの急速な処刑は藍染が何かしらの形で関わっている。今、こうしてあたしたちが動いてるのも藍染の罠なのかもしれない」

「‥‥なんであんた、それわかってて藍染の所に向かわないんだ?あんたが言えば、」

「100年間、」

心臓がとてつもない速さで脈打ってるのがわかる。

「藍染を殺そうと思ってたの。けど殺せなかった。奴には隙がないのよ、」

「どうして、そこまでして」

「恋人が殺されたの、下らない理由でしょ?復讐よ。」

ゆっくり息を吸う。

「朽木ルキアを助けたいのならば卍解を習得しないと無理よ、卍解を習得したいなら覚悟を決めなさい」

黒崎一護を真っ直ぐ見つめる。

「殺すという覚悟をね、」

「‥‥‥‥」

「全てを救えるほど強い人なんていないのよ、取捨選択をしないと何も掴めないの」

「あんたは、何を得たんだよ、何を捨てたんだよ、」

「そうね、得たものなんてないわ、失ってばっかりよ」

「‥‥‥‥」

「あたしは捨てたんじゃないの、気が付いたら何も残ってなかったのよ。だから弱いのよ。」

「じゃああんたはなんで戦ってるんだよ、」

「生きてるからよ」

「‥‥‥‥」

「無様に生き残って死ぬことすら選べなかったの。だからせめて死んでいった仲間の無念を晴らさないとやってられないの。」

「死んでいった仲間は、あんたの恋人はそれを望んでるのか?」

「わからないわ、けど仕方ないの。それしか選択できないくらいあたしは弱いのよ。」

さあ、話はおしまいよ、と向き合う。

「地下水道の上に恐らく六番隊副隊長の阿散井恋次がいるわ」

黒崎一護が唾を飲み込むのがわかる。

「阿散井に勝てなければ朽木白哉にも勝てない」

「んなことわかってるっつーの」

「あなたなら勝てると信じてるわ、黒崎一護」

山田七席から斬魄刀を受けとる。

「あなたを見てると同僚を思い出すわ。誰よりも真っ直ぐで強かった同僚を。あいつがいたらきっとあなたと同じように朽木ルキアを救出するために走り回ってたわ。」

そう言えば元同僚の弟が声を出す。

「あんた、兄貴の、」

「その同僚の名前は志波海燕っていうの。ちなみにルキアの上司よ。」

「あんた、苗字名前さんだったのか、」

「ええ、そうよ。奴の友達として1つお願いしてもいいかしら?朽木ルキアを救ってあげて。」

あたしも出来る範囲で協力したいんだけど相手が強いから生きてるかも怪しいのよ、と言えば黒崎一護がゆっくり口を開く。

「上手く言えねーけどあんた強いぜ」

「ばっか野郎!苗字名前さんは兄貴と並ぶ天才なんだよ!敬語を使え!」

「それに俺は少なくとも名前さんを味方だと思ってる。俺はあんたが危なかったら助けるぜ。」

「あら、そう。ならあたしもあなたが命の危機に瀕したら助けてあげるわ。浦原さんの弟子みたいだしね。そしたら浦原さんに会ったら元気でよかったと伝えて殴ることを約束してね。夜一さんにはよろしくとだけ伝えて。」

「夜一さんとも知り合いなのか?」

「あたしの師匠よ。」

猫が師匠‥‥?と不思議そうにしてるあたり仮の姿しか知らないのか、と納得する。幸運を祈ってる、と彼らに告げて先に進ませてもらう。黒崎一護が動き始めてる、徐々に時計が動き始めてるのだ。

「会えるなら会いたい、」


「真子にも、」

ふと虚しく出た言葉は空虚でしかなかった。


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