6月(2017)

雨は昔から好きだった。
書類整理をし、届けてる途中で雨が降ってきた。仕方なく近くの店で雨宿りだ。傘は近くに売ってるだろうか。

傘は周りとの視界を切り離してくれるから好きだ。雨の音は周りの音を消してくれるから好き。

「ずっとこのまま雨だといいのに、」

「そりゃ困るやろ。雨のせいで髪の毛が湿気で膨らんでこっちは大困りや」

傘を目の前に差し出される。

「暇なんですか、平子隊長?」

「何言うてんねん、ラブが今日休みやから仕方なく傘を届けに来たんやないかい。それに後、残りの書類五番隊やろ」

この人は相変わらず暇人だ。それにしても困ったのがこの傘の柄だ。

「私の趣味じゃないんですけど、その傘」

赤、桃、黄、黄緑、緑、水色、青、紫の色が描かれている傘は自分に合わない。

「俺からのプレゼントや、自分そういうの使わへんやろ」

黒一色みたいな辛気くさいの使ってそうやしなぁ、と言われる。

「辛気くさくて悪かったですね」

もらった傘をさしその場を去ろうとする、

「なんで入るんですか?」

「俺が濡れるからや」

思わずため息をつく。きっとこれが目的だ。

「雨も悪くないかもしれんなぁ」

こうしてお前と近づけるしと口の端をあげて笑う平子隊長から目を反らす。

きっと顔が熱いのは柄にもない傘を使っているからだ。決して傘を持ってる男のせいじゃない、そう思いながら歩き出した。

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