30:タイムリミットまであともう少し

瞬歩をして一番隊舎に入る。大体の隊長が集まってるみたいだ。

自分の立ち位置に行くのはあまり好きではない。忌々しいあいつの隣に行くのは気がひける。横目で藍染を見る。困ったような笑みを浮かべてこっちを見てくるこいつがやはり嫌いだ。その笑みを見ると寒気がする。
恐らく主役が来るのを待っているのだろうか、真意を読めないあの男を。


「…来たか、さあ!今回の行動についての弁明を貰おうか!三番隊隊長ー市丸ギン!!!」

「何ですの?イキナリ呼び出されたか思うたらこない大袈裟な…」

随分と白々しい演技だ、と奴を見る。

「尸魂界を取り仕切る隊長さん方がボクなんかのためにそろいもそろってまァ…」

色々とごちゃごちゃ言ってるこいつを観察するがいまいち心意は掴めない。
考えているうちに更木と涅も会話に混じる。それを呆れてみる他の隊長たち、端からみれば普段の様子と特段変わらない。見かねた総隊長が話をまとめる。

「ありません!」

想像よりも軽い返事に違和感しか覚えない。どこか演技臭い、いやいつものことなんだけれども。

「…何じゃと?」

「弁明なんてありませんよ、ボクの凡ミス、言い訳の仕様もないですわ、さあどんな罰でもー」

「…ちょっと待て、市丸…」

隣の男が話始めて神経を尖らせたところで再び警報がなる。

「瀞霊廷内に侵入者有り!各隊守護配置について下さい!」

「やはり旅禍か…!?」

「おいっ!?待て剣八!まだ…」

更木の脱走を皮切りにそれぞれの隊長も各配置に付く。

「随分と都合良く警鐘が鳴るものだな」

「…ようわかりませんな、言わはってる意味が」

「…それで通ると思ってるのか?僕をあまり甘く見ないことだ」

そう言い放ち藍染がその場を去る。市丸が意味深な笑みを浮かべるのが見える。

瞬歩で黒木のもとに帰る。

「隊長、」

「各隊守護配置らしい、市丸の弁明の途中でな」

「なんつーか、良いタイミングっすね」

「同じ事を藍染も言ってたわ」

「え、ちょっと待ってください、藍染隊長って雛森の前に副隊長任命してたの市丸隊長じゃないっすか、」

「だからこそ違和感しかないんじゃない」

「うーん、なんかあるんすかね?」

「まだ断定は出来ないけどね」

「旅禍の侵入もなんか関係あるんすかね?」

「旅禍と藍染が組んでるってこと?」

「ないとは言えないじゃないっすか」

「可能性は限りなく低いでしょ」

「けどタイミング的には疑わざるを得ないっしょ」

「旅禍は恐らく朽木ルキアを助けるために来てるだけよ、」

「隊長!」

三席の部下が慌てた様子で来る。

「七番隊の配置に班目三席と綾瀬川五席がいたのですが、どうやら旅禍と接触した模様です。危惧すべき旅禍の一人の特徴はオレンジ頭だとのことです。」

「班目と綾瀬川と旅禍の戦いを霊圧を消して側で待機しろ。旅禍に攻撃を仕掛けるのならば私か黒木が手を下す。オレンジ頭は大虚を追い返した男だ。念には念を入れて対処する。恐らく旅禍の力は班目たちと互角のはず。またこの短期間に力や霊圧が大きく変化している。仮にこの戦いで霊圧が大きくなり、攻撃力が増す場合も考えられなくはない。気を付けろ」

「はい!」

「隊長、出なくていいんすか〜?」

「わざわざ自ら切られに出てくれるのだからそれを使わない手はないでしょ。状況に応じては背後から旅禍を切るわ。」

「班目たち、キレそうっすね」

「関係ないわよ、根本的に戦いが好きなあいつらとは気が合わないの。生きてればいいのよ、どんだけ卑怯でもね」

相変わらずっすね、と笑われる。

「どっちが勝つと思いますか?」

「…わからないから見てるんでしょうよ。けど仮に班目たちを倒すのであれば護廷にとって驚異でしかないわ」

「なるほど、あ、2つに分かれた!どうするっすか?」

「海燕の弟に関しては警戒する意味がないわ。奴の素性は分かってるし綾瀬川に勝つことがあるとしても殺すことは出来ないはずよ。致命傷にもならない相手を追い掛けるのは時間の無駄でしかないわ。あなたは追いかけなくていい。三席、頼める?」

はい!と返事をし、瞬歩で消える。

「しっかし相変わらず班目の野郎は無駄の多い戦い方っすね」

「十一番隊にまともな戦い方をする奴なんて知らないんだけど」

二番隊で育ってきた私からすると奴らの戦いの論理は実に馬鹿みたく思える。まあ、あちらにとっても同じなんだろうけど。

「しかし勝負はつきそうね、準備して」

「班目の攻撃に慣れてきたんすかね、」

「でしょうね、あの旅禍相手の戦い方を見極めて戦えるほど戦いに慣れてはないしまだまだ戦い方が素人よ。」

とはいっても勝負は思ったより呆気なくついた。旅禍の勝ちだ。だが、手を引きたがらないところは十一番隊だ。そういう点が理解できない。
いくら粘っても敗北は敗北でしかない。最後に旅禍がもう一度手を下し、戦いは幕を閉じた。だがどれも致命傷ではないあげくに相手を治療してるのだから随分なお人好しだ。

「なるほどね、」

だが、今回の状況においては良かったのかもしれない。この旅禍が強いのは事実なのだから。

「恐らく藍染と旅禍の接触はないわ、奴の甘さから考えるとただ単に朽木ルキアを救いに来た旅禍よ」

「どうするっすか?綾瀬川も負けたみたいっすよ」

「5席!四番隊に連絡して。これから私は黒木と単独行動をするわ。この事は他の隊に一切洩らさないこと、わかってるわよね?」

一睨みすればひいっ!といい瞬歩してその場を去った。

「隊長、これからどうするんすか?」

「準備するわよ、恐らくこれから大きく物事が動くわ」

これはまだ始まりにすぎないのだ。冷静になれ、と心に問い掛ける。恐らく今回の戦いは、命をかけた戦いになるのだから。

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