22 当たり前な事ほど幸せな事なんてないんだね

瞼を閉じていても眩しいと感じる。体が気だるい。
何かがいつもと違う。今、自分の置かれている立場を理解するのにしばらく時間がかかった。





えっと、これは、うん。





すぐさま起き上がろうとしたけど、頭が尋常じゃないくらいに痛い。
昨日の記憶は残ってる。だけど、体が思うように動かない。
こんな感覚初めてで……
かなり恥ずかしい。私、服着てないし…………
隣を見ると真子も服を着てなくて、、、
そういや、真子が寝てるところ初めて見たなと少し感慨深く思う。
こんな無防備な姿を見るのは初めてだ。






「そないに見られてると寝れないんやけど」

『…………別に見てないし』

「わからんくもないで、イケメンやし」

『寝言は寝て言ってよ……』

「そない照れんくてもええやろ、可愛いやっちゃな」

『馬鹿じゃないの、もう話してらんない』

素直に慣れないのは恥ずかしいから、それに昨日ベロベロに酔っぱらってらしくないことも引きずっている。

「どこ行くねん?」

『私は帰るから、、、っ痛い』

「そらそうやろ、初めてやったんやし」

『…………真子のせいでしょ』

「ええな、その台詞。なんかキュンときたわ」

ニヤニヤ笑う真子を見て少しムッとした。

『もう帰るから』

「何を言うとんねん。今日は休んどき」

『休める訳ないでしょ、今日普通に仕事入ってるし』

その言葉を聞いた真子が真面目な顔をする。こういう顔をする真子は少し苦手だ。何でも見透かされているような気がするから。

「聞いたで、副隊長なってから一度も非番とっとらんようやな」

『まだまだ慣れないんだから仕方ないじゃん』

呆れたように私を見る真子を睨み返す。

「そんな名前ちゃんにラブから伝言や、今日は自分1日非番や」

『何よそれ、聞いてないんだけど』

「伝言言ってるやろ、それに今自分動けるんか?」

『…………』

「それにな、飲みすぎや。アホみたいに飲みおって…………」

昨日の飲み方は無茶したと自分でも自覚している。それでもって真子に迷惑をかけたことも。

『…………それはさ、悪いと思ってるけど』

「名前」

『何よ』

「身体は大丈夫なんか?」

『頭も身体も痛い……』

「頭は自分のせいやろ……」

呆れたように私を見てため息をつく。そんな姿を見ても嬉しく感じてしまうのは、貴方の違う姿を知れたから。

『もっともっと色んな真子が知りたいな』

「なんや、煽ってるんか?」

少し余裕のある顔で私に笑いかける。

『今日はもういい……』

私の返答にケラケラ笑って、そんな貴方を見て私も笑う。

「ごめんな、痛かったやろ。」

『別に……自分で決めた事だし……』

自分で言ってることなのに、恥ずかしくなって声がどんどん小さくなっていく。
そんな私に真子が甘い口付けを落とした。昨日の今日なので少し恥ずかしい。

「ほんまに、上手いこと煽りよって…………」

『いつも我が儘ばっかり言ってごめんね。』

「別にええ言うとるやろ。」

『もう1個我が儘言っていい?』

笑いながら、随分わがままな姫さんやなと真子が笑う。

「そんで、なんやねん」

『昨日のこと一生忘れないでね。』

少し困ったように真子が私を見る。

『私にとってね、昨日の事が今まで生きてきた中で一番幸せだと思ったの。だからね、真子にも覚えてて欲しいの。』

たくさん困らせるような事を言っちゃうのはきっと貴方が全てを受け入れてくれるって知ってるから。私の我が儘を言って、その我が儘を聞いて、貴方がしゃあないなァ、って言って困ったように笑うのを見るのが好きなの。



真子は私の言葉を聞いて、びっくりしたように目を見開いたと思ったらすぐに目を細めて私を抱き締めた。


「アホォ、俺かて一番幸せやったわ」

忘れる訳ないやろ、と呆れたように呟いて笑う。
そして甘い口付けを落とす。



これから同じようなことを何回するのだろう。何回貴方と口付けをして、抱き締めてもらって、身体を重ねるのだろう。

きっと何回同じようなことをしても、飽きることはない、いやきっとずっとこのトキメキは決して色褪せない。



これから、この先、貴方と過ごす日々を考えるとすごく幸せな気持ちになる。

『これが幸せななのかな?』

そう言ったら貴方が笑った。
私も笑った。

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