17 ようやく点と点が1つに繋がりました

何てことをしてしまったのだろう。
なんてらしくないことをしてしまったのだろう。後悔でたくさんだ。

結局、定時後まで一応は仕事をしたものの心ここに在らずだ。あまりにもぼうっとし過ぎたんだろう。隊長や三席を含めた席官のみんなに体調を心配され、早く帰った方がいいって言われてしまった。情けない。
お言葉に甘えて、定時後に残業なしで帰らせてもらった。

今日のことを思い出してため息が思わずこぼれた。生意気にも程があるし、他隊の隊員を疑うなんて失礼極まりないだろう。ましてやそれを隊長に言うだなんて……
しかもいきなり他隊の隊員からあなたの側にいたい、だなんて言われたらストーカーみたいだし、気持ちが悪い。
上手く隊に馴染めない私に気にかけてくれていただけなのに、その優しさにその気になったのは私だ。なんてふしだらな女なのだろう。


一人部屋で今日の後悔を繰り返す。そもそも平子隊長が優しいからその優しさに甘え過ぎだ。何だか反省してたら、どんどん鬱々してきた。うん、寝よう。まだ、定時後すぐだから日も暮れてないけど。





随分と懐かしい夢を見た。夢っていうよりも懐かしい過去なんだけど。



姉が死んで、霊術院に入って成績もけっこう優秀で、他の人と比べて圧倒的に強かった私は復讐をするために、姉の所属していた隊に乗り込んだ。
姉を殺した旦那を殺して、姉の所属していた隊も殺して、中央四十六室を殺すために。
殺して姉が戻って来る訳ではないけど、そうでもしないと姉が不憫で仕方なかった。
そうでもしないと、私も辛くて仕方なかったから。




自分の力に少しだけ傲慢だった私は、今じゃ考えられないけど、隊舎に強行突破をして、姉の旦那を人影の少ない所に連れ去った。まあ、他の隊士も応援で駆け付けて来たんだけど。
そして姉の旦那を含めた隊士達を散々に痛め付けた。派手に暴れた。みんな、下手に動けば間違いなく死ぬだろう。だけど、どうしても殺すことが出来ない。とどめが刺せないんだ。殺し方は分かる。だけど殺せない。ためらってるんだ、私の決心が。

そんな時にやって来たのは、すごく面倒そうに目の前に現れた白色の羽織を着た男で。
呑気に話す関西弁にやる気の無さそうな顔は私を苛立たせるのには十分な訳で。

皮肉めいた私の台詞に返した言葉は、霊術院で天才ともてはやされた私にとって初めてとも言える屈辱的なものだった。
だけど、売り言葉に買い言葉で出た私の言葉は随分弱々しいものだった。それに重ねられたそいつの言葉はどんどん私を責めていく。

違う、責めているんじゃなくて、本質を言い当ててるんだ。初めて会うのに、すごく私の中身が見透かされている。
そしてそんな言葉の後に加えられた真実は私には知らされなかったもので。本当は知りたかったことで。


姉が不慮の事故で死んだこと、姉が誰よりも平和を願っていたこと、自分の復讐なんて望んでいないこと。



本当はずっと知りたかった。姉がどうして死んだのか、何故死ななきゃいけなかったのか。
姉は死神になって幸せだったのか、姉は旦那に大切にされていたのか。


もう十分だった。良かった、姉が不幸の中死んでいった訳じゃなくって。

姉は強い人だった。その事を知ったのは、私が護邸に入った後。
姉は同僚が悪いとと言えども貴族出身である相手を殺したら旦那の立場が悪くなることを知っていたんだ。だから、身を呈して同僚を守り、旦那を守った。








もう1つ、護邸に入った後に知ったこと。それは護邸の内部情報を護邸外の人に漏らすことは、刑罰に処される。
そんな事を隊長が知らない訳がない。
それでも私に教えてくれた。





だからこそ、だからこそ伝えたかったんだ。
そしてね、もう1つ伝えたいの。




気がつけば、貴方の所に私の足は向かってて。
今日の私は本当にらしくない。
それでもね、今伝えないと後悔するの。

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