15 この感情に蓋をしてしまいたい
夜一さんの話を聞いてから、何やら頭がごちゃごちゃしてきた。恋とは何だろう。私は平子隊長に恋をしているのだろうか。平子隊長に私はどのような感情を抱いているのだろうか。わからない。
「よう、名前。久しぶりだな!」
『……志波副隊長』
「あの時はお世話になったなぁ」
『根に持ってんの?器が小さいなぁ。』
「お前は本当に辛辣だな。それよりどうなんだよ?何か悩んでたみたいけど何かあったのか?」
『悩みか…………あんたさ、恋してる?』
「っはぁ!?何聞いてんだよ、いきなり!な、な、何だよ!?」
『暇だから聞いてみたの。それでどうなの?』
「そ、そ、そんなの言う訳ないだろ!そういうお前はどうなんだよ。」
『あんたの好きな人は……後輩の髪長い子?』
「う、う、うるせぇよ!」
『あんたの方がうるさいよ。ただ単に恋ってどういうものかもわかんないから知りたかったの。人を好きとかよくわかんないし。それであんたに聞いてみた。それにあんたの恋事情とか興味ないから。』
「いや、少しは興味持てよ、俺たち唯一の同期だろ……それに恋って俺より年頃の女たちの方が良く知ってるだろ。例えて言えばお前よく恋文とかもらったりするだろ?」
『手紙は貰うけど内容は見てないし……』
「お前それは人格としてやばいぞ。」
けっこう割と真面目に叱られた。まあ、でもめんどくさいものは仕方ない。
「まあ、そうだな…………その人の事を考えると胸が痛くなるとか話すとドキドキするとかそんな感じじゃね?」
『…………あんたはそうなの?』
「へっ?何でだよ?」
『いや、あんたがそうだとしたら気持ち悪いなぁって。』
「お前最近俺に対する態度酷くねぇ?お前が聞いてきたから答えたんだろうが……まあ、俺だったらあれだな。身を呈してでも守りたいって思えてその人と一緒にいると自分らしくなれるとかだな。」
『ふぅん。じゃあね。』
「人が答えたのに一言で終わんのかよ……っておい!どこ行くんだよ!?名前!」
恋なんて知らない。知りたくない。知るのも面倒だと思う。
そんな下らないことにうつつを抜かしたくない。
確かに前の私ならそう言ってたんだろう。人とわざわざ関わりを持つなんて大変な事だし、失った人、残された人は辛いんだから。
だけど、最近はわからない。私はきっとあの人のためなら、きっと身を 呈してでも守りたい。私は、あの人といると自分らしくいられる。何でそう思うのかはわからないけど。
この感情は恋と言うのだろうか?この感情を知る事は少し怖い。違う、恋だと自覚しそうなのが怖いの。
逃げるように、一人になりたかったのは、きっと私が臆病だから。少しずつ気づいてきたこの感情を知るのは私にはまだ早いの。
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