13 何かが動き始めてるのをまだ知らなかったんだ
今日は絶好の書類日和だ、との愛川隊長の一言で私は今日は書類届けに没頭している。
本来ならば、隊長、副隊長は書類の点検が多いんだけれど、中央四十六室など極秘問題になると、隊長自ら書類を書き副隊長が書類を届けることになる。
それで今、十三番隊から一番隊という順番に書類を届けに行ってるんだけれども、早くも挫折しそうだ。
十二番隊でもう挫けるなんて。部屋の前からあり得ない音が聞こえ、その騒音は私の声を通さない。恐らく喜助さんが何かを仕出かしているのだろう。こういう時は、本当に強行突破でもしないと、気付かない。
気は退けるが、さあ、やろうと思ったその時に副隊長様がいらっしゃって。
「なんや、天才。うちの隊に何か用か?」
用がなければ来ねーよと思いつつ一応は同僚だ、礼儀を持って接しようと思い直し、
『別に天才じゃないですよ。浦原隊長宛の書類を届けに来たのですが、中から返事がないので入れなくて。』
前だったら曖昧に笑って誤魔化してた台詞を否定するようになったのは少しの進歩だ。それに目の前のこの人は、馬は合わないけど天才という言葉を嫌みで使ってるのではなく、一つの愛称として呼んでるのだろう。特に気にすることもない。
「何しとんねん、あのハゲっ!まあ、ええわ。入り。」
『失礼します。』
「な……な…何やねんこれは〜〜〜〜〜」
「あ、オハヨっス、ひよ里さん。」
「ここドコやと思てんねんオマエ!!隊首室やぞ隊首室!!勝手に改造してええと思てんのかコラァ!!」
「いいんスよォ、だって僕の部屋っスもん。それに改造じゃなくて模様替えっス。」
「どこが模様替えや!!完っ全に元の部屋の面影ないやんけ!!」
そう、猿柿副隊長が喚くのは分からなくもない。けど、そんな事はどうでもいい。早く書類を渡して帰りたい。
「……すぐじゃなくていいんス。ちょっとずつわかっていって下さい、ボクのこと。ボクもちょっとずつひよ里さんのことわかっていきますから、ね。」
「いややっ!!!!」
「痛い!」
「あ、そうだ。一つお願いがあるんス、ひよ里さん。今から``蛆虫の巣''に一緒に行って下さい。」
『そろそろいいですかね?書類渡したいんですけど。』
「あれ、名前さん?いつからいらっしゃったんですか?しかし、参ったなー。まずい人に聞かれたっスね。」
『あなたが模様替えしてるから部屋に入れなかったんじゃないんですか。それより、他隊の隊員が``蛆虫の巣''に入るなんて違反ですよ。いくら、元檻理隊長といえども厳しいんじゃないんですか。』
「やっぱりそうっスかね……」
『ましてや、現檻理隊長は砕蜂。只でさえ嫌われてるのにその上違反を見逃して下さいなんて、馬鹿も休み休み言って下さい。』
「なんか、今日の名前さん辛辣っすね……」
『まあ、夜一さんに頼んでおけば何とかなるんじゃないんですか。まあ、涅が出れるか出れないかは分かりませんけど。何しろあいつは危険分子だし。』
「…………流石名前さん。見抜かれちゃいましたか。」
『あなたがあいつに興味を持ってるのは知ってますし。』
「ははは、まあ、何とか上手くやりますよ。」
「何自分らで勝手に盛り上がっとんねん!うちは絶対行かへんからな!」
別に行こうか行かないかは別に個人の自由だから、いいんだけど私までラリアットを喰らうのは謎だ。反論したいけど、あまりの痛さに悶絶する。強烈だ。そんなに仲も良くない同僚にラリアット喰らわせる奴いるか?それより痛い。痛みに悶えている間に喜助さんも猿柿副隊長もいなくなってた。あいつら絶対許さねえ。
『……って事があったんですよ。あ、とりあえずお茶と茶菓子出してください。』
「何、よその隊で堂々と茶と茶菓子を要求しとんねん。それに、俺関係ないやんけ。」
『あなたの知り合いに訳もなくラリアット喰らわせられたんですよ、少しは労って下さい。』
「それより、喜助ちゃんと隊長やってるんやないか。」
『何がちゃんとやってるんですか。あいつは隙あらばサボるし、思い通りに動かす為にあらゆる手段を使う奴ですよ。あいつは隊長になった時点でけっこうやりたい放題やらかすつもりだったと思います。』
「ひどい言われ様やな…………」
『まあ、あいつがやろうとしてることは護廷十三隊の中でもとてつもない改革なんでしょうけど……』
「…………」
『どうしたんです?』
「随分喜助の事を知ってるんやなァってな、自分あんまり他人の事興味持たへんやん。」
『まあ、同じ隊でしたし、部署が一緒だった頃の方が長かったんで。それに、喜助さんは頭の良い方なんで尊敬はしてましたし。』
「ふーん」
『何です、急に?』
「いや、何でもあらへん。」
『それより、随分仕事が溜まってるみたですね。』
「…………嫌なこと言いなや。泣きたくなったやろ。」
『泣いても仕事は減りませんよ。まあ、頑張って下さい、私はあと4つ届けたら仕事終わるんで。』
「少しは手伝いましょうかとか言えへんのか……」
『みっともないですね、さっさと仕事に戻ったらどうです?』
「自分辛辣やな……しかも、名前が来たから仕事中断したんやろ……」
『では、頑張って下さい。』
何だかんだ茶と茶菓子をご馳走になって私は部屋を出る。美味しかった。
どんどん護廷が変わっていく。変わっていく姿を見ながら、少し不安に思っていく気持ちもあって。何かが起こる気がしてならないのだ。
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