10 あなたが私の弱さを認めてくれたから変われたんだ

お昼御飯を食べ終わって、隊舎に戻った。愛川隊長に昼食をとった旨を伝えて、隊首室で書類整理に取り掛かった。書類を見て思ったことは、男所帯なところであるせいか、字が汚いし読みにくい。いわば書類が下手なのだ。しかも効率が悪い。経費も無駄が多い。色々直さないといけないところが多いなと、書類に手を掛けた。けれど、ふと思い直して執務室に入った。

『三席』

「は、はい。」

『この書類、もう少し丁寧に書くよう指示して。見にくいから。それと書類のまとめ方なんだけど、すごく効率が悪い。見本置いていくからこれを基に直していってほしい。あと経費に関しても無駄遣いが多い。書類がある程度まとまったら、経費の件についても話したいから来てほしい。』

「っは、はい。」

『………………何?』

「いや、副隊長が話しかけてくるなんて珍しいなーって、いや、すいません。」

『……別にいいよ。分からないことあったら隊首室にいるから聞きに来て。』

「はい。」

隊首室に戻ると四楓院隊長がいた。隊長自ら書類を届けに来るくらいだからよっぽど大切な案件なのだろうか。それに今は愛川隊長がお昼に出ていなかったから待たせてしまったのだろう。

『申し訳ございません。少し執務室の方に行ってて。何のご用でございましたか。』

「いや、そんな固くなるな。この書類について伝えたいことがあったのとお主の様子を見に来たのじゃ。それにしても珍しいのぉ。どういう風の吹き回しじゃ?お主が自ら部下に話しかけるなんて。」

『…………そんなに珍しいですかね。』

「面倒だの一言でお主、砕蜂が決闘を挑んできてもことごとくかわしておったではないか。まあ、良い。上手くやってるみたいで安心した。」

『はぁ。……私ってそんなに人と話していませんでしたか?』

「ふはははははっ、お主自覚なかったんじゃな。まあ、良い良い。安心したぞ、わしは。それよりどうじゃ、今日は喜助の新任祝いで飲むのじゃが、お主も来ぬか?」

『今日は、特に残業の予定もないので参加しようと思います。』

「…………」

『……どうされましたか?』

「いや、びっくりしての。お主1度も飲み会に参加したことなかったじゃろ?てっきり参加しないものかと思ってたものでな……ほんにお主変わったの。前は一度も来たがらなかったのに。でもお主が来たら喜助も喜ぶじゃろ、何かとお主とは仕事の関わりが多かったしの。愛川にも伝えといてくれぬか。」

『はい。』

そこまで私は付き合いが悪かったのかと少々反省した。思い返せば私は人とまともに付き合おうとしてこなかった。
それでもって誘ってくれた、夜一さんは本気で私を心配してくれてたのだろう。少し嬉しくなった。





しばらく経費の見直しとにらめっこしていたら、愛川隊長が帰って来た。書類の見直しの件と経費の件について相談した。

『今は三席を中心に直させています。』

「おう、分かった。」

『あと、今日の定時後に四楓院隊長が主催で浦原隊長の新任祝いをするみたいなので隊長にも是非とおっしゃっていました。』

「おう、分かった。オメーも行くのか?」

『はい。浦原隊長には私が入隊した時、直属で教えてもらっていたので。』

「そうか。同じ二番隊だったもんな。」

『それでは、夜一さんにも伝えてきますね。』

「おう。そういや、オメーなんか変わったな。」

『……そうですかね?では、行ってきます。』




少しずつ私の中で何かが変わってきている。いや、違う。変えられたんだ。
ほんの少しだけど、少しずつだけど私が変わっていく。変わっていくことは、忘れていくことは怖いと思ってたけど本当は違って。ちゃんと私の心の中にはお姉ちゃんがいる。そして新しく、色んな人を知ろうとしている。

私は今、ちょっとしか自信はないけど言えるよ。生きてるって。

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