07 作り上げてきた私はあまりにも脆すぎて
今日の天気は雨模様だ。
まるで、私の気持ちを表しているようで。今日は私にとって初めての隊首会でもある。別に、自己紹介とかする訳ではないと思うけど、人と会うのは憂鬱だ。いや、違う。平子真子という男に会うのが憂鬱なのだ。平子真子にはあの飲み会以降会ってない。
ヘラヘラしているようで、人の本質を見抜くあの目は私の弱さを知っている。
そしてこれは予想だけど、確実に会ったことがあるのだ、昔の私に。癪だから絶対に本人には聞かないけど。
考え事をしてたら、愛川隊長に話しかけられた。
「そういやオメーは隊首会初めてか。」
『はい。』
「まあ、今日は新任の儀だ。」
『十二番隊の隊長ですよね。』
「ああ、確か二番隊が推薦してなかったか?」
『詳しい事は聞いておりませんが、1人心当たりはありますね。』
「こんなに二番隊の戦力が一気に人事異動して大丈夫なのか?」
『大丈夫ですよ、もう一人優秀な人材が残っているので。十二番隊は確か猿柿副隊長のところですよね?』
「ああ、ひよ里だな……」
『随分浮かない顔をなさっていますが、どうされたのですか?』
「……前の十二番隊の隊長のことを母親のように慕っていたんだよ。あいつのことだから次の隊長を困らせるに違いねえ。」
『そうなんですか。』
もし、恐らく私の予想する男ならば困るということは考えられないんだが……まあ、猿柿副隊長はなかなかのくせ者だ。私ならごめん被る。それでもっていてもあの男が困る姿なんて考えられない。
「噂をすれば…………あいつらまた喧嘩なんかしてんのか?ったく、仕方ねえな。」
前を見てみたら、平子隊長と猿柿副隊長が漫才みたいな事をしていて。あの人たちは会うたびにあれをやっているのだろうか。それに、あれが部下に心を見せるということだろうか。そうだとしたら私には無理だなと横目で見てたら
「名前、おはようさん。」
『…………おはようございます。』
「随分間があるんやな。まあ、ええわ。みんなもう揃ってんのか?」
「大体な。」
「十一番隊が来てへんやんけ。」
「あいつァサボりだ。相変わらず言うこと聞かねえみたいだぜ。」
「何や十代目の剣八か知らんがナンギなやっちゃな。何であないブタみたァな奴隊長にしてんやろな。」
「しょうがねえだろ。代々十一番隊隊長は剣八が務める。そういう仕来たりだ。」
「誰かが悪いってんならあいつに負けた先代が悪いのさ。」
中々ひどいことを言ってるな、まあ、分からなくもないけど。それに先代は負けた訳ではなく、捕まって今の隊長が繰り上げになっただけなんだ。確か先代は無間にいるはずだ。私自身会ったことはないんだけれど。
そんなことをぼんやり考えてたらいつの間にかどんどん話が進んでいて、享楽隊長や浮竹隊長がいた。
まだ、副隊長になって日数の浅い私にとってこの面々といることは凄く居づらい訳で。
「そういや、オメーも自己紹介しとけ。副隊長は式がないけど新入りには変わりねえからな。」
『七番隊副隊長苗字名前です。』
いつもなら口角をあげるけどなんだが今日はあげづらい。きっと今の私は無表情なのだろう。理由は分かってる。
「なんだ、緊張してるのか?まあ、分からなくもねえがな。まあ、よろしくしてやってください。」
「羨ましいね、こんな美人さんが副隊長なんて。」
「あたしも美人やろ。」
「少しは謙遜しなさい。」
「七番隊の副隊長が女性って前代未聞じゃないか?それに君は海燕の同期だろ?君は霊術院の時から優等生だったって海燕から聞いててね。」
いつもなら上手く愛想笑いが出来るのに、霊術院の頃に身に付いた私の癖はあなたのたった一言で出来なくなるような、脆いものだったようで……悔しくって唇を噛む。
私を見つめるあなたの瞳はあまりにも鋭く感じられて、目をすぐに反らしてしまった。
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