14:世界の変わる音が聞こえます

テストが終わった。いや、もちろん点数的に終わったわけではなく期末試験が終わったのだ。青峰もあたしも赤点は1個も取ってない。何が怖いって緑間があたしたちの点数を虹村主将と赤司くんに漏れなく報告されてることだ。
青峰なんかは俺のプライバシー!とか叫んでたけど緑間に馬鹿にはプライバシーなど存在しないのだよ!と一喝されていた、怖い。
今日からようやく部活が全国大会に向けて動き出す。全国大会に毎回帝光中は出場してると赤司くんが説明してくれてた。ようやく大会だと思うとテンションがあがってくる。


「ったくようやくこれでバスケに集中出来るぜ」

「お前たちのせいでひどい目にあったのだよ」

「え、緑間ノリノリだったじゃん」

「なんだかんだ俺らのこと大好きだもんな」

「…お前たちには2度と教えないのだよ」

「ったく、下らない話はそこまでにしてくれ」

「赤司くん!」

「え、ちょ、俺忘れられてんだけど〜」

ひどくな〜い?という紫原くんに青峰がこいつ赤司しか見えてねーからと説明してる。物理的にあり得ないのだよと訳のわからないことを言ってる緑間はスルーだ。

「青峰も苗字も赤点を取らずに済んで本当によかった。全国大会を補習で出れませんでしたじゃシャレにならないしな」

「そんなうっかり俺がやらかすわけねーだろ!」

「お前は全て40点台だから危なかったのだよ」

更衣室前で皆と分かれ、女子更衣室の前に入る。

「桃井さん、久しぶり」

青峰と歩いてるのは見たけど定期テストの部活停止期間は話さなかったなぁと思い出す。ぎこちなく挨拶を返される。

「あの!」

「うん?」

「制服、ありがとうね」

「ああ、全然大丈夫」

か、会話が続かない…

「あ、あとね私、赤司くんと何にもないから!」

「う、うん?」

いや、待って、え?

「青峰くんに苗字さんとあんまり話せないなぁって相談したら多分赤司くんの話したらすぐ飛び付くって言ってたからさ」

「あ、あいつ…」

別に隠してた訳ではないけれども、いざこうして言われると恥ずかしい。

「あたし、なんか桃井さんに嫉妬してたんだよね。赤司くんのこともそうだけどマネージャーのこととかでもさ、」

今もこうしてきっかけを出してもらってようやく話せてるしさ、と言う。こういうところがまだまだ子供なんだよな、もう少し大人になりたい。本当にごめんね、と謝れば慌てられ、苗字さんともっと仲良くなりたいな、と言われる。

「これからよろしくね、さつき!」

と言えばこちらこそよろしく、名前と言われる。
思えばマネージャーの友達は初めてだ。




さつきと2人で体育館に向かうとドリンク作りをする。どうもさつきはドリンクを作るのがあまり得意ではないということを知った。

「どうやら解決したみたいだね」

「赤司くん!」

飲み物を作ってると赤司くんが服で汗を拭きながらこちらにやってきた。そんな姿もかっこいいけど風邪を引かれたら大変だからタオルを渡せばありがとう、と返される。イケメンだ。

「だから言っただろう、俺と桃井はなにもないって」

「赤司くんは信用ならないからなぁ、」

皆に優しいし、と言えば頬を摘ままれ不機嫌そうな顔をされる。最近よく赤司くんにつねられる気がするな…

「とにかく苗字はいらない心配をする必要はない、」

そう言って足早に練習に戻ってしまった。青峰がお前って本当に鈍感、と言ってきたけど足を踏んで洗濯物を回しに行った。




「集合!」

虹村主将の声がかかり、皆が集まる。

「今日から本格的に全国大会に向けて動き出すことになった!よって練習の指示は私から監督に変わる!」

コーチの言葉に2年生と3年生の部員からざわつきが起こる。そんなに厳しいのだろうか、と前を向いたら、嘘でしょ。

「監督の白金耕造だ、」

聞き馴染みのある名前に喉の奥がひゅっと鳴るのが聞こえた。実際に会ったのは小さい頃が最後な訳で、いまいち記憶はないが、写真ではずっと見たことある。

「今まで〜」

優しく目尻を下げてるその目が逸らすことが出来ない。足が震えてくる。思わず立ってられなくなってしゃがむ。

「すいません!」

肩に手を回される。この温もりを私は知っている。ふと顔をあげれば赤司くんがいた。

「マネージャーの体調が悪いみたいなので保健室に連れていきます」

立てるか?と聞く赤司くんはなんとなく事情を察したみたいだ、多分気付いてる。
虹村主将が保健室に連れてったらすぐに戻ってこいと赤司くんに指示を出し赤司くんがうなずく。支えてもらってようやく歩けそうだ。



ふと父親の目を見れば、少し驚いた顔をしてこちらを見ていた。それは私がここにいることへの驚きなのか、私の反応を見てなのかはわからない。
ただ、怖いと思った。父親と向き合わざるを得ない状況に立たされたことを。今までずっとずっと目を背けていた父親が怖いと思った。

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