10:あと嘘をいくつ付けばあなたに近づくのだろう

家に帰るとお夕飯の準備がしてあった。おじさんの妹があたしのお母さんでおばさんとは血が繋がってないけれども本当の娘のように二人とも可愛がってくれてる。とてもありがたいし、あたしも二人が大好きだ。

本当のお母さんはあたしが7歳の時に死んだ。お母さんはよくお父さんの話をしてくれた。お父さんとお母さんはバスケを通じて知り合ったこととか、お父さんがとてもバスケが上手だったとか。そしてお母さんは毎年誕生日にお父さんから手紙が届くのを楽しみにしていた。
そして二人の結婚記念日だった日に、あたしのことをたくさん書いた手紙を送ることが二人の唯一の繋がりだったらしい。
お母さんが死んで悲しみに暮れているときに届いたのがお父さんの手紙だった。お父さんの手紙には自分が今、どれ程幸せかということが書かれてた。あたしはお父さんのことを全く知らなかった、そしてお父さんもお母さんが死んだことを知らない。
お母さんが死んだことをお父さんに言ったらお父さんはもう手紙をくれないのだろうか、そう思ったら寂しくて一生懸命にお母さんの文字を真似てお父さんに手紙を書いた。

私はお父さんのことを手紙でしか知らない、話したことなんてない。お父さんは私に会ったら分かるのだろうか。なんだか寂しくなってソファの上に丸まった。




「名前?何してるの?」

「え、おばさん?旅行は?」

「もともと日帰りよ、名前にもお土産買ってきたわ」

おばさんは優しい。

「おばさん、今日怪我しちゃってさ」

「あらあら、見てもらいなさいな。あなた!」

「ったく名前は昔から怪我が絶えないね」

傷はそんなに深くなくて、消毒をして包帯を巻いてもらう。
今日はゆっくり休みなさい、と言われて自分の部屋に行った。





こんなにもおじさんとおばさんに愛されてるんだ。何も寂しくなんてない、お父さんなんて血が繋がってるだけであたしのことなんて何も知らないじゃない。
きっとこんなに考えるのは赤司くんと話したからだ。





苗字名前完全復活!元気に朝練に向かう。

「おはようございます」

「おう、苗字生きてたか」

「常日頃からラッキーアイテムを持ち歩くといい。人事を尽くすのだよ」

「青峰に緑間。余裕にぴんぴんだしあのインチキ道具を持ち歩いたらあたし変人認定じゃん」

「……苗字、表に出るのだよ」

「苗字さん!」

「あん?さつきじゃねえか、なんだよそんなに焦って」

「昨日はごめんなさい!あたしなんかを庇ったから怪我しちゃって、倒れちゃったみたいだし」

「ああ、自分で勝手に動いたことだし、怪我は大したことないから大丈夫!倒れたのはまあ、ね」

「俺が運んだからかい?」

「あ、赤司くん……優しくない」

「失礼だな、君を運んだのは俺なのに」

「重かったらどうしようって心配しただけだもん」

「良いトレーニングになったよ」

「心折れたよ?すごく心が折れたよ?」

はは、冗談だ、と笑いながら言ってあたしに向き合う。

「今日から苗字と桃井で一軍マネージャーをやってもらうことになった。大変なことも多いだろうけど出きる限り手助けはするよ」

「ごめんなさい、あたしのせいで」

「別に桃井のせいではない。桃井は大事な戦力だ、気にせずこれからも頑張って欲しい」

端から見るとこの2人美男美女だよなー、うらやましい。おっぱいも大きいし、出るところ出て引き締まってるし。

「苗字聞いてるのか?」

「赤司くんも男の子だもんね」

「……何を勘違いしてるのかわからないがきちんと仕事をしてくれよ」

ため息をつかれて赤司くんは準備に向かう。あたしも急いでスポドリ作りに向かった。





「あ?赤司の好きなタイプ?あいつそんな話しねえからなー」

「赤司くんやっぱりおっぱい大きい子好きなのかな?」

「男は皆大きい方が好きに決まってんだろ、なあ緑間?」

「下らないのだよ」

「んだよ、照れんなって。お前貧乳好きなの?」

「馬鹿め、女性の象徴でもあるからな。ど、どちらかというとまあ、ふ、ふくよかな方が好きなのだよ」

「緑間くんが変態なのはわかりました、さようなら」

「俺は変態ではないのだよ!」

「っつーか赤司に聞けよ、おい赤司!お前好きなタイプは?」

「何の話をしてるかと思えばそんな話か」

「赤司くん!いつの間に?」

「緑間が胸が大きい子が好きだと言ってるあたりからだ」

「誤解なのだよ!どちらかと言えばの話なのだよ!俺のタイプは年上の女性だ!」

「巨乳熟女が好きなのかよ、緑間引くわ」

「青峰……」

2人でプロレス技を掛け合っている、馬鹿だなぁ。そんな2人を見て赤司くんも少し飽きれた顔をしてからこっちを見た。

「苗字、今度全中あるだろう?昨日全中に向けて体力測定をやるつもりなんだ。そこで体力測定のメニューを考えて欲しい。」

「え、桃井さんと一緒に?」

「桃井には4月から選手1人1人のデータをまとめてもらってるんだ。だからこれは君1人の仕事になる。頼めるか?」

「あ、うん」

ようやく頼られてきたという嬉しさと桃井さんはずっと頼られてたのかという複雑な思いが交差する。

ちなみに、と声をかけられる。

「俺の好きなタイプは品がある女性だ」

では失礼するよ、と言われる。

「やっぱり桃井さんなんじゃん」

思わず嘲笑が溢れた。どんだけ努力したってあなたに近付けない。

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