08:最初から君は特別だった

「赤司」

名前を呼ばれて振り返れば見慣れた姿が目に入った。なんとなく来る予想はしていたけれど。

「どうした、緑間」

「苗字のことどういうつもりなのだよ」

「先ほど言った通りだが」

「違うのだよ!書類のことについてだ」

あぁ、と声が漏れる。そんな反応が気に食わないのかやや眉間に皺を寄せる男を見る。

「随分と苗字を認めてるみたいだな」

「バスケの知識については桃井に比べてはまだ乏しいがそれでもマネージャーの中ではあるほうだろう。それに医療に関する知識はずば抜けている。まだ中学生である俺達は身体の成長と技術が追い付かない場合もある。それでその管理を頼んだんだよ」

「苗字を選んだのはなぜなのだよ」

「青峰が怪我をした時に一軍マネージャーは全員動揺していただろう。だがたまたま通り過ぎた苗字が一番冷静に対処できていた。彼女の腕はプロに近いものがあるからこそ一軍マネージャーに相応しいと思っただけだ」

「マネージャーの数が一軍は定員を越えているのだよ」


「マネージャー間で問題を起こしている一軍に相応しくない人が混ざってるみたいだからそれを切り捨てるまでだ」

と呟く。緑間の顔が少し強張るのがわかる。

「それは苗字の制服に関係があるのか」

「恐らく桃井に自分の奴を渡したんだろうね」

あいつらしいのだよ、と呟く緑間を見る。

「緑間こそ随分苗字と仲がいいみたいじゃないか」

「茶化すな、青峰と苗字は暇さえあればだらけるから監視してるだけなのだよ」

「苗字は人望が厚い奴だ。きっとマネージャーの件もなんとかするだろう」

「……」

「一軍マネージャーに彼女を選んだのはやはり正解だった」

思わず笑いが溢れる。一軍マネージャーにまだなったばかりだけれども1日で彼女は目を見張るほど変わった。やはり俺の目に狂いはなかった。緑間を見れば驚いたような顔をしている。

「お前にとって苗字は特別なようだな」

「さあね、ただ他の女性とは違うよ」

彼女の今後がとても気になるのも事実だ、と言えば気に食わんのだよ、と言われる。

「全てがお前の思い通りになるのだから」

思わず笑いが出てくる。なんなのだよ、と不機嫌そうに言う緑間に言う。

「少なくとも苗字の告白を断ったときにこれから好きになってもらう、と言われるとは予想出来なかったよ」

彼女らしい、と思わず呟いた。とりあえずは彼女が書類をどうまとめてくるのか楽しみだ。

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