03:眩しすぎて見えないよ

王子様のことをずっと考えていたら気が付けば放課後なわけで。もうすぐ王子様との対面じゃん!とテンションがあがるのも束の間の出来事、

「え、入部試験?なんじゃそりゃ?」

「えっと、帝光のバスケ部って強いらしいからあるって有名だよ?」

いやいや、知らねぇよ!まじか。

「ちなみに部員もどこの軍に入るか分けられるらしくって、って、苗字さん聞いてないか…」

最初から一軍に配属されるのなんて部員もマネージャーも珍しいんだって、とかなんちゃら言ってるけど全く耳に入ってこない。ちなみに私はバスケのルールなんかさっぱりわからない。筆記死んだよ、ジーザス。




「あんたが受かるなんてどうにかしてるよ」

「いや、一番ビリだったんですけど、三軍で王子様と一番離れてるんですけど」

「それで続けんの?」

「そりゃあもう王子様と持てる唯一の接点ですから」

「接点0に等しいけどね」

「かずみん辛辣!」

バスケのルールブックを読む。最近ようやくポジションの名前を覚えたところでまだまだ技の名前とかはさっぱりわからない。もちろん毎日怒られ三昧の日々を送ってる。

「王子様ね、副部長なんだって」

「ふーん、名前とは随分世界が違うじゃん」

もういっそ諦めるために告れば?振られた人、記念すべき30人目になれるよ、と言われる。

「なんかさ、同じ土俵にも立ててないのに告るのは違うと思うんだよね」

「そう言って逃げてるだけでしょ。そもそも住む世界違うんだし、あんた馬鹿だけど顔だけは良いんだから違う人にすれば?」

「え、かずみん傷ついたよ?」

もう入部して1ヶ月でしょ、と言われ少し考える。ここらへんが諦め時なのか、いや諦めたらそこで試合終了だ。なんかそんな言葉聞いたことある。けど今のままでいいのかな?と思いつつも何もしてない自分もいる。王子様がとても遠い。



今日も今日とて悲しくスポドリ作りと洗濯をする。バスケに関わる仕事は全くさせてもらえない。洗濯機がある部室に向かいながら、悲しくため息をついていると

「おい、大丈夫か!?」

「血を流して倒れてるぞ!」

「きゅ、救急車呼ばないと!」

「どうかなさいましたか?」

思わず声をかけたのはおじさんが町医者をやっていたからこういう状況に慣れているせいかもしれない。東京だけど田舎の方だからよくこうやって駆け込む人とかいるし。

「ボールの籠に頭をぶつけて、血が、たくさん、どうしよう」

泣きそうな顔して桃井さんが色黒くんを指差す。周りの人も少し慌てふためいた様子だ。

「とりあえず横に寝かせてください」

場所が頭だから出血の量が多いだけで恐らく救急車を呼ぶほどの怪我じゃないだろう。

「ガーゼを持ってきてください!出来れば封の空いてないやつ!」

うぅ、とかうめいてる色黒くんを見る。意識はあるみたいだし、傷の大きさは小さい。やっぱり頭だから出血量が多い。膝枕をして傷の位置を心臓より高い位置にして、ガーゼを当てる。

「なるべく大きく深呼吸してくださいね」

しばらくしたら血が止まるはずなので、と声をかける。
大ちゃん、と心配そうにしている桃井さんを見る。あたしも桃井さんほど美人でボインだったらな、と思ってたらおい、と話しかけられる。

「あぁ、意識ははっきりしてますね、多分大丈夫ですけど病院で見てもらってください」

「いや、俺じゃなくてお前は大丈夫なのかよ?」

「やっば、飲み物忘れてた!教えてくださってありがとうございます!」

その大丈夫の意味が血みどろになった服のこととは分からず戻ったら三軍の人に驚かれたし、監督には帰れと言われてしまった。ちなみに3年生のマネージャーの人には飲み物は?と聞かれてしまった、まずい。
王子様も拝めず体操着も駄目にしてしまったし、よくもまあここまで怒られるものだと思う。
向いてないのかなぁ、とうじうじ悩む自分が情けない。遠すぎる王子様の背中に少し悲しくなった。

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