南沢さんが雷門


そんな貴方も魅力的


それは、とある昼下がりの事。

「み、南沢さん。それ…」

神童が青ざめ、南沢の背中を指差した。気になって部員全員で南沢の背中を見る。当の南沢は頭にはてなを浮かべる。皆が黙るなか、ゆっくりと口を開いたのは、霧野だった。

「羽が生えてますよ」

そう、南沢の背中には真っ黒な羽が生えていたのだ。

南沢が背中に手を回して羽を確認する。その間、神童と速水は青ざめてあたふたしているし、車田と剣城は唖然としているし、霧野と浜野は興味津々に見ている。松風と西園はその羽に触れようとして三国と天城に止められていた。

「え、いつの間に…」

「遅れました、…南沢さん!?」

遅れて登場した倉間が南沢の背中を見て持っていた学生鞄を落とした。

「可愛いっすね!!」

「は?」

倉間の言葉に南沢を含めた部員全員が同じ反応をする。倉間は部員の反応は気にせず、たたたっと走って南沢の後ろに来ると背中に生えているの羽に触れた。

「っわ、バカ、擽ってぇ」

倉間が触れた瞬間南沢の体がぴくっと反応した。

「あれ、羽って触られるのに弱いんですか?」

そんな南沢の反応を見た倉間は面白い玩具を見つけた子供のように、にやりと笑って羽を優しく撫でた。

「っ、だから、触んなっ、変態」

南沢は顔を真っ赤にしながら倉間を罵るが、それが倉間に伝わる筈もなく、楽しそうに羽を弄っていた。

「まさに弱点って奴ですね」

「うっせ、黙れ」

笑いすぎて涙目の南沢がギロっと倉間を睨み付けた。無論倉間にはそんな南沢は無視して羽を弄り続けようとしたが、いきなり学ランを引っ張られてバランスを失い、ばたんと尻餅を着いた。その隙に南沢は倉間から離れる。

「痛っ…」

倉間が立ち上がって後ろを振り向くと、目の前にはにやけている松風(倉間が尻餅ついたことに笑っている)とその後ろに同じく笑っている浜野・霧野・西園・天城と呆れている三国・車田・神童・速水・剣城の姿。それを見て倉間はこここが部室の更衣室である事に気づいた。

「いちゃつくなら他所でやれ」

三国がため息をつく。

「ちゅーか、倉間変態じゃね」

「変態じゃねーよ」

ぺしっとパーで倉間が浜野の頭を叩く。

「変態だろ」

南沢のその言葉に倉間が後ろを振り返ると、すっかりユニフォームに着替えた南沢が立っていた。その背中はいつも通りで羽など生えていない。

「着替えちゃたんすか?」

「当たり前だろ」

南沢が残念そうな顔をする倉間の頭をグーで叩くと、倉間は頭を押さえて痛みに悶えていた。

「あの、南沢さん」

神童が何か尋ねたそうに、しかし遠慮がちに声をかけた。察しのいい南沢が「羽の事か?」と問うと、ゆっくりと頭を縦に振った。

「実は俺、魔界の住民なんだ」

「は?」

南沢の説明は、つまりこういう事だった。彼は魔界の住民だが、あまり人間とは変わらないのでこちらの世界で暮らしていた事。羽は自由自在にしまったり出したりできて、今回はたまたましまい忘れていたという事だった。

「だから、前と変わらず接してくれればいいから」

南沢がそう言うと、納得したのか神童が頷いた。

「よし、じゃあ練習始めましょう!!」

天馬がそう言うと、部員がぞろぞろと更衣室から出る。そして、更衣室に残ったのは南沢とまだ着替えていない倉間だった。

「魔界の住民、か」

倉間がそう呟くと南沢は俯いた。

「黙ってて、悪かった」

「いっすよ、別に。だってほら魔界の住民って、なんだか更に魅力的じゃないですか」

「は?」

「だから、南沢さんの事がもっと好きになったってことっす」

倉間がそう言って、南沢の腕を引っ張って引き寄せ、唇にキスをした。お互いの唇が離れたら、目線があって、お互いに微笑んだ。




遅くなりました。すいません。時間かけたわりには結構ぐだぐだですよね…。リクエストありがとうございました
2011/10/23










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