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side神童
霧野と二人で並んで夜道を歩く。いつの間にか消えていた倉間には後で改めて二人でお礼を言おう。
「なあ、霧野」
「ん?」
「さっき、どうして怒ったんだ?」
そう言うと、霧野は少し困ったような顔をした。
「怒ったわけじゃないんだ」
「え、ならどうして…?」
「理由は、今は詳しく言えない」
霧野は相変わらず困った顔のまま、きっぱりと言った。
「俺の気持ちに整理がついたら、必ず言うから」
「今じゃダメなのか?」
「神童がここまで気にするなんて珍しいな。何で、そんなに知りたいんだ?」
霧野に言われて、ああそう言えばどうしてだろうと思った。明確な理由は特にない。単刀直入に言えば。
「霧野に嫌われたくないから」
霧野が驚いた顔をする。俺も驚いた。そのまま少し気まずい空気が流れて、いつの間にか俺の家に着いて、じゃあなと別れる。ああ、どうしたんだ俺。
(まるで霧野に恋してるみたいだ)
ベクトルが変化しつつあります。
2011/09/27
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