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side倉間


夜、コンビニに行く途中。公園のベンチに座る神童を見かけた。珍しく一人だ。

「倉間…?」

神童と目線が合った。不思議そうな顔をしてこちらを見る神童の目は真っ赤だった。

「お前、こんなとこで何してんだよ」

見れば制服のままだし、学校の鞄も持っている。まだ家に帰って来ない神童を親も心配しているんじゃないか、なんて考えながら神童の隣に座った。そしたら急にぽろぽろと泣き出した。

「し、神童!?」

正直、どうしたら良いのかわからない。俺は霧野じゃないんだ、神童をあやす方法なんてわからない。

「…きり、のに、ぐすっ、嫌われた」

「は!?」


その後、なんとか神童を落ち着かせて詳しく話を聞いた。保健室での南沢さんと三国さんの事はこっちだってが泣きたかったけど、なんだか俺の分まで神童が泣いてるみたいで、不思議と涙は出てこなかった。

「俺が、うじうじしてるから、嫌われたんだ…」

「それはないだろ」

「だって…ぐすっ…」

「ああ、もう。うじうじすんなっ!!霧野本人に直接聞けばいいだろ!!」

思わず怒鳴ってしまってから、しまったと思った。神童は驚いて泣き止んでいた。

「直接聞いて、謝ればいいだろ。そしたら、霧野は許してくれるだろ」

俺がそう言うと神童はごしごしと学ランの袖で涙を拭って、頷いた。一件落着だと俺が頷いたのも束の間、ポイントに入れていた携帯がブルブルと震える。霧野からの着信だった。

『神童がいないんだ!!何か知らないか?』

電話越しに焦った霧野の声がした。俺は無言で神童に携帯を差し出す。神童が不思議そうに受け取った。

『倉間、聞いてるか?』

「霧野…」

『神童!?今どこに…』

「さっき別れた公園」

『今行くから、待ってて』

ツーツー、と音がする携帯を神童が俺に渡して、迎えに来るらしい、と言った。

「よかったな」

「ああ、ありがとな倉間」

霧野が来る前に帰ろうか、と思ったら、風のような速さで現れた霧野が神童に抱きついた。

「神童、バカ野郎。心配したんだぞ」

「ごめん、霧野」

神童ではなくて霧野が泣きそうだという状況は初めて見た。神童が何度もごめんと繰り返して、霧野もごめんと謝る。俺は場違いな気がして、ゆっくりとその場を去った。

一人きりになって、初めて南沢さんと三国さんの事を現実的に受け止めた。神童には霧野がいるから大丈夫だろう。なら、自分はどうか。

(南沢さん…、好きです)

失恋の痛みが今更俺を襲って、暗い夜道を泣きそうになりながら帰った。

(まるで一人ぼっちになったような気がした)




2011/09/27









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