三南


君不足


俺が部活を辞めてから、三国と一緒にいる時間が減った。三国には部活があるし、俺も部活を辞めたら親に叱られて、塾に入れられたからあまり暇ではない。それでも塾の無い日は宿題をやりながら、教室で三国を待つ。今日も、数学のワークを広げながら三国が来るのを待っていた。


「っは、南沢!!」

サッカー棟から走ってきたのか、息を切らした三国が教室の戸を開ける。

「走んなくていいのに」

「南沢を待たせるわけには行かないだろ」

「もう十分待ってるし」

「少しでも早く会いたいだろ」

「バカじゃねぇの」

口では悪態を吐きつつも、多分顔は照れて赤くなっているだろうから、見られたくなくて荷物をまとめて顔を背ける。すると三国は俺の荷物をひょいと持って、行くぞ、と言った。そういうとこが、いちいち優しくて、かっこいいなと思う。

自転車置き場で、三国のチャリの籠に二人分の荷物を入れる。流石に制服で二人乗りはできないので、三国が自転車を押して、俺はその隣を歩く。お互い特に何も話さない。それでもこの時間は俺にとって至福の時だ。

暫く歩いて、俺の家の前に着く。じゃあな、と帰ろうとする三国の学ランの裾を掴んで引き留める。

「待って」

「南沢…?」

「もっと傍にいて」

三国が足りない。もっと傍にいたい。三国は少し困ったような顔をして、それから俺の頭をそっと撫でた。

「子供扱いしてんの?」

「いや。なんか、可愛いなって」

「バカじゃねーの。可愛くねぇよ」

気恥ずかしくなって、そっぽを向く。すると三国が抱きしめてきた。

「淋しがらせて、ごめんな」

「別に淋しくない」

そう言いながら腕を三国の背に回して、ぎゅっと力強く抱きしめる。俺より少し高い体温が何だか心地よくて、ずっとこうしていたい気分になった。




ほのぼのシリアスを目指してみた。さみしがりやな南沢さんはきっと可愛い

2011/08/28










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