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side拓人


来なければ良かった、と心の底から後悔した。

保健室の前に着くと、話し声がした。内容は聞き取れなかったけれど、三国さんと南沢さんの声だった。俺は少し扉を開けた。

目に飛び込んで来たのは、三国さんと南沢さんがキスしているところだった。

瞬間、涙が込み上げてきて扉を開けたままその場が逃げ出してしまった。なんで、なんで、いやだ、いやだ。考えたことはあったけれど、実際三国さんと南沢さんが両思いだとわかると胸が苦しくてしかたない。必死に涙を堪えて走って、走った。昇降口の近くまで来て、立ち止まる。はあはあと息が上がって、涙を堪えているせいもあってか上手く呼吸ができない。

「三国さんっ」

叶うことはないとわかっていたはずなのに、いざ現実を突き付けられると何故こんなに苦しいのだろう。哀しくて、辛くて、淋しいのだろう。

「…神童?」

昇降口の外で待っていた霧野が帰りの遅い俺を心配したのか、ここまで来ていた。俺は霧野を見つけた途端、今まで堪えていたものが溢れだして涙をポロポロと流しながら霧野に抱きついた。霧野は一瞬驚いた顔をしたあと、ゆっくりと俺の頭を撫でた。

(現実を知る苦しみを痛感する)




2011/08/12









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