蘭←拓で拓人独白


彼女ができた、とあいつに告げられた日。俺は今までに無い衝撃を受けた。長い間抱いてきた淡い恋心が儚く散る。泣き虫な俺にしては珍しく、微笑んで、おめでとう、と告げた。

高校は別の学校に進学した。卒業式の日、また会おうな、と言って別れた。一年生の時に三回程会っただけで、ニ年生になってから今日まで一度も会わない。

時折街で見かけていたピンクのおさげは、もうどこにもいない。髪を切ったのか、あるいはずっと遠くに行ってしまったのかもしれない。でも、俺にはあいつの居場所がわからない。

部屋の写真たてに飾ってあった写真の1つにホーリーロードの時の写真がある。そこに写るあいつを見ると、無性に泣きたくなる。時折嗚咽をしながら、何度もその写真を見た。ある日その行為が苦しくなって写真たてをそっと伏せた。今はもう埃を被っている。

何度か誰かと付き合ったこともあった。それこそ、年上も年下も、女も男も。セックスをしたことも何度もある。けれど一瞬もあいつが好きだという感情を忘れることはできなかった。

あいつを好きだという感情はいつだって俺を支配しているらしい。もう何年も前のことなのに。馬鹿みたいだ、と自分でも感じる。目を瞑れば鮮明に思い出す事ができる。一度たりともあいつの事を忘れたことはなかった。

俺の想いは、一生叶わない。もう俺があいつに会う事は二度と無いのだから。俺とあいつの人生が交わる事は、ない。それでも俺はあいつが好きだった。


(腐るほどある明日にきみの名前はないんだね)


遠い昨日にきみの名前は消えたんだ。

(あれ、あいつの名前が思い出せない)




お題からどんどん逸れていきます。予定していた内容って、書いてるうちになぜか変わっちゃうんです。

2011/08/07



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