幼い頃の蘭丸と拓人
「また、泣いてるの?」
「泣いてない…!!」
嘘だ。神童の目は真っ赤に腫れて、頬には涙の後が残っている。
「何があったんだ?」
「…俺がミスしたから、チームが負けたんだ」
「ミスって…、あの時のパスのこと?あれくらい、誰でもやるだろ」
「でも、あのパスが通っていたら、得点するチャンスだったんだ!!」
神童は責任感が強すぎて、何でも自分を責める。その上、慰めの言葉は全く通用しない。妥協という言葉がこいつの頭の中には無いんだ。だからいつも、一人で踞って泣いているんだ。
「神童、特訓しよう」
「え」
「次、ミスしないために特訓しよう」
「…うん」
俺が差し伸べた手を神童が弱々しく掴んだ。俺はその手をしっかりと握ってやった。
俺がこいつが落ち込んだ時にしてやれる事は、慰めじゃなくて、引っ張ってやる事なんだ。
「霧野」
「なんだ?」
「ありがとう」
そう言った神童の顔は、泣き顔から笑顔に変わっていた。
2011/06/01〜15
←