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side車田
ついてきてくれ、と南沢に引っ張られた。一応まだ部活は始まっていないとはいえ、もうそろそろ始まってもおかしくない時間だ。引っ張られている途中で保健室に向かっているのだと気付く。しかし、なぜ俺も連れていくのかわからない。本人に直接訊ねてみると、一人で行くのは恥ずかしいんだよ、と少し赤くなって言われた。
「失礼します」
保健室の扉をノックしてあける。薬品の独特の匂いを除けば、温度と湿度が安定していて過ごしやすい空間だ。
「あら、南沢君に車田君」
そこにいたのは保健医では無く、顧問の音無先生だった。
「三国君なら今は寝てるわ」
疲れが貯まって発熱しちゃったみたい、と優しく笑って三国が寝てるベッドに案内してくれる。ベッドには三国が静かに寝ていた。顔色も大分いい。
「…三国」
南沢のさっきまでの心配そうな顔は消え、安心した顔に変わる。本当に心配してたんだな、と思った。こいつのこういうところは少し可愛いと思う。
「あ、南沢君お願いがあるんだけど」
「何ですか?」
「三国君が起きるまで、ここにいてほしいの」
「俺が…?」
「私は部活に顔出さなきゃいけないし、車田君には三国の代わりに皆をまとめてもらわないと」
病人を一人にはできないでしょ、と音無先生に言われると南沢は戸惑いながらも首を縦に降った。
「私は先に行くから、車田君も後から来てね」
音無先生がそう言って保健室を出ていく。
「車田、どうしよう」
「どうしようって、何がだよ」
「三国と二人っきりだ」
南沢の顔が少し赤くなる。どうしよう、って俺が答えを知ってるはずないだろ。
「座ってればいいだろ」
「あ、そうだな」
こいつはいつもはクールでかっこいい(とクラスの女子が言っていた)のに、こういう時は本当に馬鹿になる。
(恋すると人は馬鹿になるらしい)
2011/07/31
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