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side速水
「お前らいちゃいちゃすんな」
「そういうの、八つ当たりって言うんですよね」
「そうそう。そんなんじゃ南沢さんに振り向いて貰えないよー」
いつものように教室で浜野と喋っていたら、同じ教室にいた倉間にそう言われた。
「それに、ただ話してただけですよ」
「密着し過ぎなんだよ。暑くねぇのかよ」
「全然」
浜野がそう言って、ぎゅーっと俺を抱きしめてきた。それを見た倉間が大きなため息を吐いた。
「リア充うぜぇ」
「倉間だってモテるんだから、誰かと付き合えば?」
俺がそう言うと、倉間が至って真面目な表情で、
「俺、南沢さんじゃないとダメだから」
と、極当たり前の事であるかのように言った。
「バーカ。何言ってんだよ」
「み、南沢さん!?」
ガラガラ、と教室の扉を開けて南沢さんが入ってきた。しかも今の会話を聞いていたらしい。倉間は驚いて固まっている。
「何で南沢さんがここにいるんです?」
俺が聞くと南沢さんは呆れた顔をして壁の時計を指さした。あ、とっくに部活始まる時間を過ぎてる。
「仕方ねぇから、呼びに来てやったんだよ。さっさと行くぞ」
そう言って教室を出ようとした南沢さんは、あ、と思い出したようにこちらを振り向いて倉間の頭をぽんっと軽く叩いた。
「あぁ言う事は、俺よりでかくなってから言いな」
あぁ言う事とはさっきの倉間の台詞を指しているのだろう。倉間は真っ赤になって、余計なお世話っす、と悪態をついていた。
その日の部活のあと、自販機で牛乳を購入する倉間を目撃した。浜野と、明日倉間に牛乳を1ダース程買ってあげようか、なんて会話をしながら帰路についた。
(これが僕らの応援方法)
2011/07/07
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