「さあみんな!カウウントダウンだ!!」
王の呼びかけに広間に集まった国民が一気に湧き上がる。
ヤムライハの指示で魔道士たちは持ち場についた。
ついに祭りも終盤だ。
「・・・みんな、いい顔をしていますね。」
国民と、八人将と、アリババたちへと順に視線を移しながら、ジャーファルは言った。
「ああ。特にアリババくんたちは本当に強くなったな。」
「・・・いろいろ、ありましたからね。」
バルバッドでのことを思い出し顔を曇らせるジャーファルの頭を、シンドバッドはくしゃりとなでた。
「祭りの時にそんな顔をするな。みんな見ているぞ」
「・・・そう、ですね。来年こそはシンの女癖と酒癖が治るといいんですけどねえ」
「なっ、ひどいなあ・・・」
「だって事実でしょう。ほら、始まりますよ」
「「「さーん、にーい、いーち・・・」」」
ぜろ、の声と共に空に大輪の花火が打ち上がる。
色とりどりの花にみんなの瞳がキラキラと輝いていた。
魔道士たちが次々と花火を打ち上げるたびに、あちこちで歓声や笑いが起こっていた
「ぶっははは、あれお前じゃねえのマスルール!眠そうな目とかそっくり・・・」
「じゃあとなりのちっこいのは先輩っすかね」
「あの鳥に乗ってるの私かなあ」
「とても綺麗にできていますね。」
八人将や王たちを型どったものもあり、夜空を駆け回っていた。
「・・・この笑顔が、今年も、来年も、ずっと続くといいのにな。」
誰へ向かってでもなく、そう宙につぶやいたシンドバッドの横顔は、鮮やかな花火に照らされていながらも少し寂しそうだった。
「何言ってるんですか、シン。続かせるんでしょう。守っていくんでしょう。それがこの国を立ち上げた、私たちをここまで導いてきた、あなたの責任です。・・・言ったでしょう、これが貴方の選んだ道です。前に進むしか、ないんですよ。」
シンドバッドはもう一度、自分の家族である国民たちの顔を見渡し、「そうだな」と強い眼差しで答えた。
「・・・ジャーファル、今年もよろしく頼むな」
「もちろんです、王よ。どこまでもあなたのおそばに。」
そうして一年が幕を開ける
(護りぬく。たとえこの手が染まろうとも)