もういくつ寝ると | ナノ


ぼーっとテレビを見ていると、デジタル時計の表示がまた一つ進んだ。
きらびやかな衣装を着た歌手が歌い終わって、戻っていく。
そろそろ番組も終盤だ。名の知れた大物が次も歌うらしい。

「おーい、起きてっかー?」
「・・・っス。」

嘘つけ。今完璧寝てただろうが。
肩に寄りかかっていた重みが少しだけ軽くなって、すぐにまた帰ってくる。
あーあ、今年もあと30分ねえっていうのになあ。

一緒に年を越そうって誘ったのは俺の方だった。
俺もマスルールも部活の忘年会はもう終わってて、お互い暇だったし。
流石にカウントダウンにテーマパークに出かけるほど乙女チックな趣味は持ち合わせていない。
でもまあ、一緒にいるくらいはしてもいいんじゃねえかなって思って、誘ってみた。
マスルールは二つ返事でOKだったし、晩飯の材料と年越しそばを買って帰って、今に至る。

「ったく、晩飯食ってそば食った途端に寝やがって。飯食いに来ただけかっつの。」

テレビに向き合う小さなソファに二人で座れば、こいつのガタイがいいのもあって結構きつい。だから大抵は俺がコイツのことをクッション替わりにしてるんだが、今日は逆だった。

あー、おもってえ。
落としてやってもいいんだけど、この暖かさは心地いい。
なんて考えてるうちに今年もあと10分。
日付変わってすぐにオメデトウを言ってやろうと思ってたんだけどこれじゃあ聞いてんのか聞いてないのかわかったもんじゃないな。

「・・・まあ、いいか。」

どうせこの部屋には俺たち二人しかいないんだし、明日の早朝に来客の予定もない。
年が明けて一番に顔を合わせるのはいやでもコイツなんだから。

慣れた温もりに体を預け、目を閉じる。
意識が途切れかけた頃、テレビから新年を告げるアナウンサーの声がした。


目が覚めたらきっと
(隣にいるのは君だから)