In a holiday | ナノ
(普通の現代パロディです。年も状況もご想像におまかせ。)
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「ん...」
遮光カーテンの隙間から漏れた細い光がまぶたを探り、それに透けて眼球に写る赤い血潮に身じろぎをした。

眩しさに光から顔をそらせ、頭上にあるはずの時計を手探りでみつける。時刻は10時少し前。
普段ならば遅刻だ寝坊したと布団を蹴りあげ飛び起きるところだが、あいにく今日は日曜日。前日の夜更かしと酒の量を咎めるかのように甲高く鳴り響く目覚まし時計も今日はお休みだ。

うでのなかで眠る温もりに軽く口づけ、もうしばらく共に惰眠をむさぼることにした。
そんなことを2度、3度としているうちに、抱き締めた温もりがモゾモゾと動き出す。

「おはよう、ジャーファル、」
「...おはよ...ございます...?」

ぼーっとこちらを見つめ、俺が誰なのか、何故ここにいるのかわからないといった風に首をかしげる。まだ完全に覚醒していないらしい。

ああかわいい!!その肩口に顔を埋めてぎゅーっと抱き締めてやるとくすぐったそうに身をすくませた。

「何時ですか...?シン、」
「んー?昼過ぎくらい?」
「...そんなに寝てたんですか私...」

はあ、とため息をつくあいだも、頬や首筋へと唇を落としていく。残念ながら見える位置に印をつけるとあとでこっぴどくしかられてしまうため、そこは自重しておく。

「ほら...シン、いい加減に起きないと脳みそ溶けちゃいますよ?」

いつもは彼から見えることがないであろう頭頂部に口付けられ、それこそ俺の脳みそは溶けだしそうだ。もうちょっと、と駄々をこねる子供のように腕にこめる力を強くする。

このなんでもない時間が、好きだ。...好きだ。
「好きだよ」
「...知ってます」
「ひどいなあ」
「だって前も、今も、何度も聞きましたもん」
「まだ言い足りないんだよ、全然!」

ジャーファルに抱きついたまま、ごろんと仰向けに転がる。自然とジャーファルは俺のうえに覆い被さるかたちになり、ぽすんと胸板に頬をのせた。

「あ、聞こえる。心臓の音。」
「どんなだ?」
「ゆっくりですね。案外。...ああ、また眠ってしまいそう...」

俺の心音が子守唄に聞こえたのか、ジャーファルが再びまぶたを閉じる。その背中にぽんぽんとあやすようにリズムをのせた。

「「ぐぅぅ...」」

二つ同時の心音とは違うもっと直接的な音にジャーファルが飛び起きる。音のでどころはわかっている。
心臓よりも少ししたにある、食べ物を取り込むための臓器なのだが、そういえば昨夜も酒のつまみくらいしか食べていなかったし、時刻はすでに昼過ぎだ。
空っぽの限界をこえてしまったらしい。

俺たちは顔を見合わせ...この間抜けぶりにぷはっと吹き出した。


さあ、少し遅いお昼にしようか。
幸せな一日はあと半分も残っている。


ゆるり流れる時間をともに
(とある恋人たちの休日)

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いつもこんなにゆったりしてる訳じゃないです
時間になったらたたき起こされます。
少しだけ前世とリンクしてたらなあって曖昧な台詞も入れてみました。
ラブラブなシンジャが大好きです