第一悔

Abyssus abyssum invocat

××



それは1人の少女の目だった

少女の目は憎悪に染まっており、まるで煉獄の炎のように見える

煮えたぎった血の池は真紅に空を染め上げ全てを燃やし尽くす

少女は誰よりもあの娘を愛し、信仰していた

それは依存にも似た、狂気

少女は娘を『神様』と呼び、信仰し続けた


だからこそ、少女は誰よりもこの世の不条理を許す事ができなかった

誰よりも信仰していた少女だったからこそ、少女は『神様』の死を認めることができなかったのだ


「絶対に許さない……全員、殺してやるっ!!」


そして少女は禁忌に手を出した

それは人として許されぬ思い

しかし少女は人間だった

誰よりも人間らしかったのだ


「これは復讐なんて生易しいもので終わらせない、全員私の手で殺す!!」


だからこそ少女は自身の手が血に染まる事に躊躇しなかった

そしてそれは―――1つの町の、子供達をも巻き込み始めた

憎悪は憎悪を呼び

悲哀は悲哀を呼び

激情は激情を呼び

そして、地獄は更なる地獄を求め始めた


××


それは、1人の少女を、大勢の人々が愛したからこそ起きた復讐劇だった

復讐は何もうまないし、そしてそれを死者が願っているとも限らない

しかしそれを生きている人間が理解することな不可能だ

それは死者と生者が言葉を交わせないということではない

人間は人間でしかありえなく、そして何よりも心を持ってしまっている

だからこそ、人は誰か憎み、悲しみ、嫌う


そして…本能を理性で抑えられるほど、その子供達は大人ではなかった

さて、それではそろそろ開演の時間だ

主役の居なくなった物語

一体、どこに向かうと言うのだろうか



Abyssus abyssum invocat


(地獄は地獄を呼ぶ)

(水面に落とされた1つの小石)

(波紋は波紋を呼ぶ)


[ 52/98 ]

[*prev] [next#]




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -