第二十二輪

ずっとずっと、愛してます

××

円堂side

遠くの方から救急車とパトカーのサイレンの音が聞こえてくる

心地よい風が吹いて、さっきまでのできごとが急に嘘のように思えた

―――全部、終わったんだ

なんとか全員無事に脱出することができた

………いや、全員なんかじゃない


「………亜紀」


あいつは、未だどこか虚空を見続けながら動かない

その目に何が映ってるのかわからない

投げ出された手足の痣が痛々しい

何を考えているのかわからない

あんなに一緒だったのに

大切な存在だった筈なのに

なのに、なんで今はこんなに遠いんだ?


「くそっ、本当に何なんだこのペンギンは!!」


鬼瓦警部はまだ謎のウィルスによって改変されているデータの復旧に精を尽くしている

他の皆は、あんなことがあった所為か疲れきっていて、地面に座っている奴等が何人か居る


「守君」


ふいに、後ろから玲姫が話しかけてきた

その顔はどこか浮かない表情をしている


「あの、ね……こんな事言う場面じゃないんだろうけど……」


しどろもどろに、俺の顔色を窺いながら言う


「おめでとう、これで全部終わったね」


「………あぁ、これで、終わったんだよな」


確かに、こんな場面で言う言葉じゃないのだろう

でも、それでも確かに終わったんだ

これで、全部


「それでさ、ちょっとコッチに来てもらっていい?」


「?、別にいいけど」


「…………ありがと、それじゃぁちょっとここで待っててね」


そう言って玲姫は一旦キャラバンの中に入っていき、何かを取ってくる

戻ってきた玲姫の手の中には小さな小包があった


「あのね?これ、守君が勝っt「放しなさい!!私を誰だと思っているんですか!!」


玲姫が何かを言おうとしている途中、鬼瓦警部の方から男の声が響いてきた

何事だと思い、男の方を見ると、男は刑事達に抵抗してなんとか逃げようとしていた


「くっ、こんな所で!!」


刑事達の腕を振り払い、逃げ出そうとする

その時、俺の方を見てきて男は顔を大きく歪ませた


「貴方が、貴方が居るからあぁぁぁぁ!!」


そう言って男は懐から何か黒い物を取り出す

遠くの方で秋が「危ないっ!」って叫んで

黒い物から何か弾丸の様な物が発射されて

皆が「逃げろっ!」って叫ぶ

俺はその言葉に従って逃げようとするけど、後ろは崖で

弾丸がすぐ俺の目の前まで迫っt、



銃声が、数秒遅れてその場に響いて聞こえてきた



××


風の音がすぐ耳の横で聞こえる

周りの景色がやけにゆっくりと過ぎていき

あぁ、人間って限界になると本当にこんな風に景色が見えるんだって何故か妙に関心してしまい

避けれない、そう思っていた時

目の前が、綺麗な水色でうまった


「え?」


そんな拍子ぬけた声が自分の口から出て

突然のできごとで頭の中が真っ白になって

瞬間、赤い血飛沫が水色の隙間からちらほら見えた

周りの奴等も驚いた顔をしていて

だって、そうだろう?

なんでだよ、なんで


「っ、亜紀!!」


亜紀の体はゆっくりと傾いていき、崖の方へと落ちていく

俺はそれに逸早く気づいて腕を伸ばすけど、亜紀は何故か安心したような顔をして、腕を伸ばさない

お願いだ、お願いだから腕を伸ばしてくれよ

だって、こんなに近くに

俺の必死の思いが伝わっていないのか、風丸は笑っていて


「――――――――――――――」


後ろから、声にならない泣き声と


今さら過ぎるパトカーと救急車が着いた音が聞こえた


××


ぼんやりとした景色の中、なぜか円堂が撃たれる姿だけはハッキリと見えて

その時は、ただ円堂を助けなきゃ、って思って

気づいたら円堂を庇って撃たれていた

お腹から血がダラダラ流れて、すっごい痛くて、なんとか痛みに耐えようと力を入れるけど

だけど、全然体に力が入んなくて


重力に従うまま、崖の方に落ちた


円堂が必死に腕を伸ばすけど、腕を伸ばす力も全然なくて

なんとか円堂を安心させなきゃって、必死に笑顔を作る

円堂の隣には玲姫が泣きそうな顔をしながら居て

私はそれを見てないふりして、円堂に伝える

あのね守、私ね―――


「バーーカッ」


酷く歪な笑みで私の友達が馬鹿にしたようにそう呟いた




薔薇


(あなたを愛しています)

(そして少女は奈落に落ちる)

(どこまでも、暗い森の中へ)

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