第二十一輪

どうか、この時を忘れないで下さい

××

研崎side

研崎竜一は今までに無いほど焦っていた

今まで自分がコツコツと積み上げてきた大切な計画

それが目の前に居る少女達の所為で徐々に綻びが出てきているのだから


ありえない、ありえない、ありえない!!

私の完璧なる計画がこんな奴等によって崩れ去るなど

そうだ、彼女だ

彼女さえ目覚めれば、彼女さえ居れば何度でもやり直せる

そうすれば、そうすれば


「研崎竜一!!」


ふいに、後ろから自身の名を呼ばれる

あぁ、一体なんだと言うんだ

私にはまだやるべき事が


「貴様を児童連続誘拐及び傷害の疑いで逮捕する!!」


一体、どこで綻びが出たというのか


××

春奈side

鬼瓦警部が来て、ダークエンペラーズの監督を逮捕していて、吉良星次郎が馬鹿みたいな懺悔をしていて……

どんどんと今までの事件が解決されて、今更のように全部が元通りになっていく

でもそんなのどうでもいい

何でもっと早く来てくれなかったのか

そうすれば風丸さんが倒れる事などなかったかもしれないのに


「かぜ、まるさん、お願い、起きてくさだぃ」


ぽろぽろと頬に涙が伝うけど、今はそんなのに構ってられない

やっと、気づけたんです

私、馬鹿だから今まで気づいてあげられなかったけど、やっと気づいたんです

風丸さん、寂しかったんですよね

寂しいから、守ろうと必死になってたんですよね

私と、同じ気持ちだったんですよね

お願いです、目を覚ましてください

今度は間違えないから

ちゃんと私が隣に立ってあげますから、今度は後ろじゃなくて隣に居るから


「やだ、いやです」


私は今まで逃げてばかりでした

貴方に押し付けてばかりでした

だから、今度は私に押し付けてもいいから

逃げても、八つ当たりしても、喚き散らしても全部受け止めるから

いっそ私のことを殺したいくらい憎んでもいいから


「目、覚ましてくださいよぉ」


だから、だから、だから、今度こそ


「っぅ、ぁ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」


遠くから、何かが爆発するような乾いた音が響いた

××

一之瀬side


「一体、何の音だ!!」


遠くからデカイ爆発音が聞こえて、地鳴りが響き、建物全体が揺れる

誰もが突然の出来事に混乱していて、その場から動けないで居た

っ、地震?いや違う、これは―――


「っ、警部!!大変です!!何者かがエイリアのデータベースにハッキングしてきて、データがどんどん書き換えられていってます!!」


「なにぃっ!!」


ベンチの方から鬼瓦警部と部下の会話が聞こえてきた

?、データが書き換えられている?

だれが、なんのために?


「っ、データをコピーできないのか!!」


「できません!!さっきから謎のペンギンに邪魔されて……」


―――謎のペンギンに邪魔されて

言葉だけ聞くと何を言ってるんだと思う

だけど、俺だけにはソレがなんなのかわかってしまう

謎のペンギンって、確か前に亜紀が言っていた……


『じゃーん、見てみてフィッチー、私特性ペンギンさんウィルス&システム』


『……とりあえず、ペンギンってwww』


『フィッチーヒデェ!!なんだよちくしょう、ペンギン可愛いじゃん!』


『ペンギン爆弾って言うペンギンを爆発させる必殺技持ってる人に言われてもなぁ…』


『のせまで!!だってあれは、水族館に行った時隣に居るバカップルがうざかったから!!』


『どっちにしろ酷いな』


って、要らない所まで思い出しちゃったよ!

じゃなくて、まさか亜紀がデータを?

一体なんで、何の為に………いや、そんな事わかりきってるじゃないか

だけど心が否定する、頭ではわかっていても

あいつは、友達の為なら自分を犠牲にする

それは例え、どんな汚名を着せられようとも


「っ、ともかく皆脱出するわよ!!」


「でも監督!出口が……」


瞳子監督が皆に急いで指示を出す物の出口が瓦礫によって塞がれてしまう

くそっ、これじゃぁ……

俺達がどうしようと焦っていると、反対側の出口の方から車が走ってくる音が聞こえてきた

この音は、


「皆!!早く乗るんだ!!」


古株さんがキャラバンを走らせてここまで来てくれた

これでなんとか、


「っ、音無!!ともかく今は亜紀を連れて脱出するよ!!」


「えっ、あ…ハイッ!!」


俺の言葉に数秒遅れて反応する

音無が右側、俺が左側の腕を肩に掛けて引きずるように亜紀を引っ張る

なんとかキャラバンの所まで辿り着き、風丸を椅子に降ろす

そして全員が乗り込んだ事を確認して、古株さんはキャラバンを急発進させた

後ろの方はどんどん崩れていって、後もう少しで追いつかれそうだ


「見て!出口よ!!」


秋が叫ぶ

もうすぐそこまで、出口は来ていた



勿忘草

(私を忘れないで)

(それは1人の少女の願い)

(君のために私は居るのだから)

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