第十九輪

心を1つにして

××

エイリア学園、中央棟の通路―――そこでマックスと半田はロボットとバトルをしていた


「「レボリューションV!!」」


2人の必殺技、というか半田に至っては初めての必殺技をロボット相手に容赦無くぶつける

その度にロボットが大破していくが、それでもどこからともなくロボットは無限に出続けてくる


「っ、ちょっとー!!何このロボットの数!!いい加減キレルんだけど!!」


「うわっ!だからって俺に当たるなよ!!」


倒しても倒しても通路の奥の方からロボットがあふれ出る

元々、2人は音無春奈を救出する事を風丸亜紀から託されていたのだ

その為に2人は中央棟の最上階にある観戦室を目指していたのだが、半田が不用意にどこかの扉を開けてしまったため警報が鳴り響き、警備ロボットが大量にでてきてしまったのである


「あー、もう!!半田は中途半端だし、半田は中途半田だし!!本当最悪!!」


「おい!!それ俺の悪口しか言ってないだろ!!」


悪態をつきながら再びレボリューションVをロボットにぶつける

早く音無春奈の下に行かなければならない

2人ともエイリア石で強化されている為、あまり乱発すると副作用が出てくる危険性がある

それに、早くフィールドに戻らなければ試合が終わってしまう

それでは遅いのだ、音無春奈を救出に向かう意味が無い


「あー……半田…、君ってダークフェニックスの練習したことあったっけ?」


「ハァ?んなの無いに決まってるだろ、それにあれは三人技だろーが」


「そうなんだよねぇ……」


未だ通路の奥から大量にあふれ出てくる警備ロボット

ここまで数が多いと気が滅入るし、一体あれだけの数がどこにあったのか気になるところだ


「って、マックス!!前、前!!」


「え?って、うわっ!!」


警備ロボットがもう50メートル手前ぐらいまで迫ってきており、サッカーボールを打ちつけてくる

それを半田が気づき、なんとかギリギリの所で避けられた


「っぅ〜、これってもしかしなくても……ピンチ?」


「…もしかしなくて、てか絶対そうだな」


二人の周りを取り囲む大量のロボット

もはやこれまでか、そう思い最後の悪足掻きとして再びレボリューションVを打とうとすると、ふいに後ろから何かが飛び出してきた


「スパイラルショット!!」


横回転のかかったボールがロボット達に当たりドミノ倒しの要領で次々と倒れていく

2人がゆっくりと後ろを振り向くとそこに居たのは……


「や、俺だよ」


「「一之瀬!!」」


フィールドの魔術師、一之瀬一哉がそこに立っていた

××

音無side

観戦室の一角、そこに音無春奈は両腕を後手に縛られて座らされていた

何度か縄抜けできないものかと思い弄ってみたが全然駄目で、ドアの方にも強面の男が2人立っており、走って逃げる事は不可能そうだ

…観戦室、隅の方とはいえ試合の様子はよく見えた

今、風丸亜紀は自分という人質が居る為にあんなにも苦しい思いをしている


―――私が、簡単に捕まらなければ


そう思い、下唇を強く噛む

だが、たとえ音無春奈が強く抵抗していたとしても男の大人2人に中学生の女子が勝てるとは到底思えない

冷たく聞こえるかもしれないが、たとえ彼女がどんなに強く抵抗していたとしてもこの物語の結末は変わらない、という事だ


あの時、風丸さんに信じてと言わなければ、あの人は傷つく事が無かったのかな―――


ふいに、思ってしまった

それは風丸亜紀の今までの行動を全て否定する言葉

自分がこんな事を思うのは厚かましいことだとはわかっている

だけど、思わずに入られなかったのだ


自分は昔から守られていてばかりだった

施設に居た頃はお兄ちゃんに守られ、音無の家に行ったときも新しい両親に守られ、そして今だって風丸亜紀に守られ続けている

私は、誰かに守られ続けていてばかりだ

それが、堪らなく悔しくて、許せなかった

守られてばかりの、お姫様な自分が


―――じゃぁ、あの人は?


頭の中で誰かが呟く

今、あのフィールドで独りで必死に戦っているあの人は?

あの人はどうなんだ、あの人は一体誰に守られているというのだ?


「……あ、れ?」


あの人は、誰に守られればいい?

あの人は誰に助けを求めればいい?


「?、何かいいましたか」


音無春奈の呟きに吉良星次郎が反応し、振り返る

しかし音無春奈は遠くを見つめて吉良の言葉に反応出来なかった


そう言えばそうだ、なんであの人は傷ついているのだ

……私達は守られていて、あの人は守られていない

この差はなんだ、あの人と私達に一体なんの差があるというのだ


「なんですか、それ」


声が震える

それに気づいてしまった瞬間、胃の中に一気に氷が詰められたような感覚に陥る

なんで、今まで気づかなかったのだ

だって、あの人は何も悪い事をしていないじゃないか

むしろ私達を守る為に頑張ってきたじゃないか

なのに、どうして誰も彼女の隣に居ないの?


「こんなの……間違ってます」


握りすぎた手から血が滴り落ちる

あの人は何時だって私達を守ってくれてるのに、なんで私達は彼女を守ってやれないのだ

なぜ、気づかなかったのだろう、なんで行動に移せなかったのだろう

彼女は今だって戦っている

なら、私だって戦わないといけない

何時までも、守ってもらっているお姫様のままじゃいられないのだから


「貴方達は間違ってます!!」


ありったけの思いを込めて、叫ぶ

それは、無謀にも近い行為

体全体を使ってでの吉良星次郎へのタックル

次の行為なんか考えていない、馬鹿みたいな行為


あぁ、そうだ、馬鹿みたいな行為だ

だけど、あの人はこの馬鹿みたいで、すごく難しい行為を何度だってやってきた

あの人は、何時だって私達の為にやってきたのだ!!


「私が、風丸さんを守らなきゃいけないんだ!!」


こんなにも難しい事を、あの人はやってきたのだから、今度は私達が……彼女の隣に立たなくちゃならないんだ!!


××


それは、一瞬だった

音無春奈から吉良星次郎へのタックル

その突然すぎる行動に大人2人は目を奪われた

そして、その一瞬の時


「「レボリューションV」」


「スパイラルショット!!」


半田、マックス、一之瀬の必殺技が扉を打ち破り、大人2人を昏倒させる

その突然の出来事には音無春奈も困惑した


「半田さん、マックスさん、一之瀬さん!?」


それは意図していない助け

まさか三人が此処に来るなど考えてもいなかった


「な、え?なんでここに?」


「話は後で!!今はとにかくここを脱出するよ!!」


考える暇も無く、マックスにそう言われて縄を引き千切られ観戦室を飛び出る

扉を抜け、通路を右へ左へ、分けが判らなくなるほど走っていく

その上、いきなり引っ張られて走ったから所々躓く


「えぇっ!!本当に何なんですか!!」


思考が追いつかず、つい叫んでしまった

混乱しすぎて何がなんだかわからなくなる

なんで三人がここにいるのか、なんでこんな事になっているのか

ありったけの疑問をぶつける様に叫んだ


「あはは、実は亜紀に君の救出を頼まれていたんだ」


すると、隣を走っていた一之瀬にそう説明された


風丸、さんに?

つまり、なんだ、自分があんな事をしなくても私は助かった?

風丸さんは私を助けようとした?

そう思うと心が締め付けられ、唇を自然と噛んでしまい口の中に血の味が広がる

結局私が何をしようとしたところであの人の助けにはならないのだ

私のとった行為など、あの人に比べれば


「それは違うよ」


ふいに、隣を走っている一之瀬が言う


「君の行為は無駄なんかじゃないよ」


「なっ、何が……わか」


「わかるさ、俺も同じだから」


そう言って一之瀬は音無春奈から目を逸らす

表情はこちら側からは見えない


「少なくとも、亜紀は判ったと思うよ」


…一体、何がわかると言うのだ

フィールドから私の居た位置など見えやしないし、私の言葉など届かない

だけど、一之瀬さんに言われて思う

あの人なら、気づくんだろうな

たとえ地球の裏側にいたって、あの人は気づいてくれる


「フィールドの入り口だ!!」


半田が指を指しながら叫ぶ

通路の奥の方にフィールドへと続く光が見えた

あの光を超えれば―――


私達が光を越えた瞬間、フィールドにホイッスルの音が鳴った

××

ホイッスルの音がフィールドに鳴り響く

急いで電光掲示板を見るが試合時間はまだ充分にあった

じゃぁ、あの音は?

視界が嫌にぼやけてしまうので目を細めながらフィールドの中央を見る

遠くからは息を呑む音と、小さな悲鳴が聞こえてきた


「あ、れ?」


頭が理解するのを拒否する

隣で一之瀬さん達が何かを叫んでフィールドの中央へと走っていく

私は、まるで地面に足が縫い付けられたかのように動けない


だって、あの青いのは、散々見慣れたあの空みたいに青い髪は


「い、いや、イヤァァァァァァァッッッ!!」


甲高い、耳障りな悲鳴が遠くで聞こえた



ブルーデージー

(協力)

(やっと気づけたのに)

(やっと、私は……)

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