第十七輪

それは呪いにも似た…

××

ペンギン爆弾―――それは私がイタリアのサッカーチームに所属していた頃に作った最初の必殺技にして最強の必殺技

技そのものの威力は当然の様に高いが、それよりも恐ろしいのが


「取ったっ、って、え?」


「悪いが、ペンギン爆弾は爆発するんだよ!!」


そう、ペンギン爆弾はその名の通り相手がボールを取った瞬間爆発する事で一気に威力が増す必殺技

本来の威力+爆発による威力によってペンギン爆弾は最強の技と化す技


そうして、開始一分もたたない内にダークエンペラーズ側に点が入った


「なっ、嘘だろ!!」


元々、風丸亜紀は世界トップクラスのプレイヤーに数えられるほどの実力を持っている

将来は確実にプロのチーム入りに入る事が約束されていたはずだった

だが、


「勝つのは、俺達だ」


彼女はあの事件により記憶を、実力を、志を、全てを失った

実はペンギン爆弾は本来ならもっと威力の高い必殺技で、今の立向居の実力では取ることすら難しかっただろう

だが記憶を失ってしまった事でペンギン爆弾を撃つことが無くなり、結果…威力を損なう事になってしまったのだ

とはいえ、今の実力でも充分にイナズマキャラバンを倒す事などできる

それほどまでに、彼女は強かったのだ


「さぁ、続きを早く始めようぜ?」


××


「ゲールブラスト!!」


再び、イナズマキャラバン側のゴールネットを揺らす

点差は既に10点近くついており、立向居も既に立っているのがやっとの状況だった


………こんなものか


やはり、いくら特訓してきたとはいえ、イタリアで数々の強豪と戦ってきた彼女に勝つことは出来ない

染岡達にしてもエイリア石によってパワーアップされており、イナズマキャラバン側が勝つことはもはや絶望的だった


「……円堂、お前は何時までそこに居るつもりだ?」


円堂の前に立ちふさがり、問いかける


「かぜ、まる」


「それとも、お前じゃゴールを守りきる自身がないのか?」


「なっ!!」


明らかな挑発

だがワザと言っているということに気づけないほど、円堂は頭に血が上っていた


「っ、瞳子監督!!」


「…選手交代!立向居に代わって、円堂守!!」


円堂の視線を受け、瞳子はすぐさま選手交代を告げる


……まだだ、このままだと間に合わない

この程度では、すぐに終わってしまう


「…円堂だけで守りきれるのか?なんだったらジェネシスだった連中もチームに入れてもいいんだぜ?」


「っ、風丸!!お前っ!!!」


歪んだ笑顔で円堂を見る

早く、早くしないと


「ま、お前達の実力じゃ俺には勝てないけどな」


だって、私は強いから

××

立向居に代わり円堂がGKに、そして更には疲労の激しい一之瀬に代わりヒロトがMFに入る

試合が再び開始され、風丸が相手からボールを奪いどんどん相手フィールドを突き抜けていく

だが、その前にヒロトが立ちふさがる


「っ、亜紀ちゃん、なんで!!」


激しいボールの奪い合い

元々ヒロトにも天性のサッカーセンスがあった、それはまるで死んだ吉良ヒロトと同じように

ソレが今、皮肉な形で彼女に苦戦をしいらせる


「…なんで?そんなの、ヒーちゃんが1番わかるでしょ?」


私に1番似ている貴方が―――


「っ、もしかして、君は―――」


ヒロトが何かを言い切る前に亜紀はヒロトを抜く


―――円堂のことを愛してる


その言葉がヒロトの頭の中で反響し、最悪の未来を想像させた


「(もしかして、亜紀ちゃんは!!)」


ただ遠ざかっていく背中を、ヒロトは見送ることしかできなかった


そして次々に相手を抜き去っていき、再び亜紀はゴール前に立つ

もはや彼女を止められる選手は残っていない


「…円堂、お前にこのボールが止められるか?」


「っ、絶対に止めてみせる!!」


陰りの無い、真っ直ぐな瞳

絶望的な状況下に居るにも関わらず、円堂の瞳は光を失っていなかった


―――それでこそ、円堂だよ


両者ともに深く息を吸い込み、覚悟を決める


「っ、行くぞ!!円堂!!」


「来い!!」


シュート体勢に入り、そして円堂もそれを受け止める為に両手を構える


「ペンギン、」


「正義の、」


「爆弾!!」「鉄拳!!」


2つの必殺技が、2人の思いが、2人の戦いが

今、ぶつかり始めた




黒百合

(呪い)

(それは破滅にも似た行動)

(呪いにも似た、信念)

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