第十六輪

さぁ、戦争を始めようではないか

××

……後半、とうとうイナズマキャラバンがジェネシスを抜いて、勝ってしまった

ヒーちゃんは、円堂に負けてしまったのだ

わかってた、ヒーちゃんがどうやったって円堂に勝てないことなど


「……風丸亜紀さん、わかっていますね?」


「ハイ」


静かな声で吉良星次郎は告げる

その瞳には何も映っていない

いや、違う………この人は最初から何も見ちゃいないんだ


「あなたには彼らと戦ってもらいます」


それは予定調和

もしジェネシスがイナズマキャラバンに負けたさいの保険

私達、ダークエンペラーズがイナズマキャラバンを倒す


「……それでは、研崎さん、よろしくお願いします」


「はい」


そう言って研崎と私は観戦室から出て行く

……正直言って、円堂と戦うのは嫌だし、そっきゅん達にも戦って欲しくない

でも、これをしないと駄目なんだ

少しでも、時間を稼がないと

焦りを隠すため俯く……絶対に、成功させるんだ


「…後悔でもしていますか?」


ふと、研崎が足を止め私に問いかけてくる

…後悔?そんなもの


「生まれる前から、たくさんしてるよ」


××


ヒーちゃんと円堂が和解する感動的なシーン

そこに突如として黒い霧がフィールドを包む


「なっ、なんだよこれ」


イナズマキャラバンはおろか、ジェネシスでさえ混乱している

当然だ、こんな事説明されていないのだから


「……円堂」


私は静かに呟く

黒い霧が徐々に晴れていき、そこから現れたのは黒いマントを羽織った


「かぜ、まる?」


私と、雷門イレブンだった皆


その光景に、皆が驚きを隠せていない


「なん、で…お前達が?」


「………円堂」


私は円堂の言葉を無視し、サッカーボールを手に取る

ヒーちゃんは驚いた顔をして、そしてすぐに私が何をしようとしているか判ってしまったようで……酷く傷ついた顔をしていた


「サッカー、やろうぜ?」


酷く歪な笑顔で、私は円堂に言い放った


××


「っ、どういうことだよ!!」


円堂は私が言った言葉の意味がわからないと言うように叫ぶ

それはイナズマキャラバンの皆も一緒だ


「…簡単な事ですよ、今から私のチームであるダークエンペラーズ、そして吉良瞳子のチームであるイナズマキャラバンが戦うんですよ」


すると横から研崎が出てきてとても簡単な説明をしてきた

だけど、円堂が聞きたいのはそんなことじゃない


「そういうことじゃない!!なんで染岡達がここに居るんだよ!!」


怒鳴りながら円堂はすごい剣幕で私達を睨みつける

当然だろう、そっきゅん達は本来ならまだ入院している筈なのだから

仲間思いな円堂が怒るのは当たり前だ


「あぁ、それh「簡単な事だろ?俺がコイツを使ったんだよ」


研崎が何かを言う前に私がセリフを遮る

懐から出したのは怪しい紫色の光を放つエイリア石

それを円堂やイナズマキャラバンの皆に見せ付ける


「これがどういう物か、お前ならわかるだろ?」


「っ、風丸!!お前!!」


私に噛み付きそうな勢いで円堂が怒鳴ってくる

イナズマキャラバンの面々も今にも私を襲い掛かってきそうな勢いだ


……幸いにも、研崎は私のセリフを訂正する事はなく、そっきゅん達も何も言わなかった

マックスや半ちゃんには睨まれて、ヒーちゃんも何か言いたげそうな顔をしていたけど、これで一先ずは大丈夫だろう


「……風丸君、わかっていると思いますけれど……勝手な行動をすれば音無春奈さんがどうなるかわかっていますね?」


「……わかってるよ」


ベンチに戻り、研崎が小声で私に話しかけてくる

今、はるなんは吉良星次郎の元に居る

下手に行動すればはるなんに何があるかわからない


「それと、貴方にはこれを渡しておきます」


そう言って手渡されたのは小さなイヤリングだった

エイリア石と同じ、紫色をしている


「小型の無線機です、指示があればそれを使って言いますので耳に付けておいてください」


「…わかった」


そう言って右耳に付ける


……ゆっくりと息を吸って吐く

相手側ベンチに居るヒーちゃんと目が合った

何か言いたげな顔をして、俯く

…何が言いたいのかはわかっている

でも


「絶対に、勝つ」


私は、意地でも戦わなければいけないんだ

××

試合開始のホイッスルがフィールドに鳴り響く

ホイッスルが鳴り響くと同時に私は一気に相手フィールドを駆け抜ける


「なっ」

「速い!!」


エイリア石の効果もあるが、私はそれ以上に思い出した

あの特訓の日々を、経験地を、磨きかけた技を

私は開始早々たちむーが守るゴール前に辿り着き一気にシュート体勢に入る


…それはあの皇帝ペンギン一号のプロトタイプとなった技

私が始めて生み出した、最強の技

口に指を当て、高らかに口笛を吹く


「なっ、あの技は!?」


「…ペンギン―――」


あの日以来、打っていなかった

今まで一度も破られていない必殺技


「爆弾!!」


赤い煙が辺りを包み込んだ



ノコギリソウ

(戦い)

(さぁ、両者共に譲れないものを賭けて)

(最高の戦いをしようじゃないか)

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