第十輪

その笑顔が憎らしい

××

ふうちゃんに連れて行かれた先は第3グラウンド

そこではちょうどバーンが練習をしていた


「あ?ガゼル…こっちのグラウンドになんのようだよ」

「今からここのグラウンドは彼女と私が使う、チューリップはさっさと出て行け」

「誰がチューリップだっ、この厨二野朗!!」


バーンがふうちゃんの胸倉を掴んで怒鳴る

…まぁ、確かにバーンのあの髪型はチューリップに見えるけど

でもバーンの厨二発言も合ってるよね、ふうちゃんまんま厨二病だし


「てかよ、一体何に使うんだよ、ダイヤモンドダストのグラウンドは開いてるだろ?」

「私と彼女でサッカーをするんだよ、だから誰にも見られない所がいいんだ、ここのグラウンドは棟から離れてるからな」


そう言ってバーンを押しのけてフィールドに入る

私は一応バーンに「ごめん」って言ってフィールドに入った


「それじゃぁ、始めようか」


ふうちゃんの合図でゲームが始まる

とは言ってもなぁ……私そこまで強くないんだよね

必殺技だって大抵ドリブル技だし、シュート技なんて覚えてな、い

あれ?じゃぁ、私どうやってガイアから点を取ったんだっけ?


だんだんと迫ってくる風景

チカチカと光る蛍光灯

右右左とカンカン音が鳴る

ブクブクボコボコと水が流れる音


「行くぞっ!」


ふうちゃんがシュート体勢に入る


ほら、早く止めないと―――

誰かが頭の中で囁く

わかるはずでしょ?いっつもやってたでしょ?

あの必殺技でいっつも打ち返していたじゃないか


「っ、ぁ、あ、れ?」


一瞬、自分が何しようとしているのか忘れてしまう

私、何しようとしたの?

冷や汗が背中に大量に流れ出て気持ち悪い

今すぐここから逃げ出したい


「ノーザン、インパクトッッ!!」


ふうちゃんがひっさつわざをうってくる

わたしはそれをまっしょうめんからうけとめようとして

めのまえにでてあしをあげて

それで?


どうしたかったの?


「ああ、あぁぁぁぁぁぁっっ!!」


頭の中がごちゃごちゃになってしまう

余計な事ばっか考えて、でも、そんなのは私らしくなくて

だからこそ、私はいつものように皆がやらないような事をして

馬鹿やって、無理して、力任せにボールを打ち返した


「なっ、馬鹿なっ!!」

「あいつ、マジでやってんのかよ!!」


あぁ、馬鹿みたいだよ

本当に馬鹿みたいだけど

それでも、私は


「――――――――――――ッッッ!!」


真っ赤な爆発がグラウンドを包んだ

××

煙が徐々に晴れていき、周りの景色が見える

煙が晴れてくると同時に私は地面へと倒れこんだ

……さっきの技、なんだったんだろう

色々と、意味がわからない

本当になんだったんだ、なんだったんだ、意味がわからない、状況が理解できない、理解不能、思考回路フリーズ中、視覚も聴覚も感覚も遮断中

もう、全部わかんない


「……君は馬鹿かい?必殺技に必殺技をぶつけて相殺させようだなんて…もし君の方の力が弱かったら君は大怪我をしていたんだぞ」


ふーちゃんが私の前に出てきて言う

…必殺技をぶつける?

あはは、私そんな危ない事したんだ


「…ハァ、今回は運良く同等の力でぶつかったお陰で被害はなかったが…」

「なっ、ガゼル馬鹿言ってんじゃねぇよ!!どうすんだよこの抉れたグラウンド!!俺達は明日も練習あるんだぞっ!!」

「知らん、自力で直せ」

「お、ま、え、なぁ〜〜〜〜っっ!!」


バーンがふうちゃんの胸倉を掴んで殴る体勢になっている

だがふうちゃんはすぐさまその状況から抜け出し、逆にバーンに向かって蹴りを喰らわせた

……何やってんだか


「ふぅ、君もいつまでボーっとしてるんだい?」


そう言って私に手を差し出してくる

バーンは今だに怒ってる様子だけど、それは私にではなくふうちゃんに対して怒ってる様だ


「ふうちゃん」


なんだか、久しぶりにサッカーをした気がする

あぁ、サッカーってこんなに楽しかったんだな

まだまだ疲れていて寝ていたい気分だったが、流石に何時までもここに居るのはバーンに迷惑だろう

ふうちゃんの手を掴み、起き上がる

あれ?なんだろう、なんか…今、


「……何してるの?」


冷たい声がフィールドに響く

地を這うような低い声に驚いて入り口の方に顔を向けると、無表情で立っているグラン(ヒーちゃん)が居た

あまりにも冷たい声にバーンもふうちゃんも驚いた顔をしている


「あ、ヒーちゃ」


ヒーちゃんって呼ぼうとした筈なのに、途中で呼べなくなる

目の前には青いユニフォームがドアップで映し出されていた

……これって、ふうちゃんのだよね?


「……グランがこんな所で何をしているんだい?」


私の顔を胸板に押し付けたままふうちゃんは喋る


「何をしていたって君には関係ないだろう?それよりも彼女をこちらに渡してくれないかな?」


「嫌だ、と言ったらどうする?」


「…………」


………私の真上でラブコメが発生している件について、誰か応答願います

誰だ、私をリア充にさせようとしているのは

ちょ、バーン、見てないで助けろ、そうバーンに向かって謎の電波を発生させる

何?無理だって?貴様それでも男か、チューリップか!!


「ちょ、2人とも、まずはおちt」


頼れるバーンも居ないので私が顔を上げて二人を説得しようとすると、何か柔らかいものが唇に当たった

目の前にはふうちゃんの顔

隣で驚いた顔をしているヒーちゃんとバーン


あ、キスされたっぽい



カタクリ

(嫉妬)

(レモンの味も何もしないキス)

(きっと心はとっくに荒れ果てている)

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