第二十一話

なんどでも、同じ過ちを繰り返す


××

誰かside


むかしむかし、ある所に1人の女の子がいました


そんな感じでいつも始まる御伽噺、それが夢のような物語ばかりで私は好きだった

女の子だったら誰でも憧れるでしょ?好きな男の子と一緒になる幸せな物語

でも現実ってさ、嫌なくらい挫折が多いんだよね

御伽噺の様にうまくいかなくて、いっつも気がつかない内に消えてしまっている

私も気がつかないで、いつの間にか失ってしまった

ただ純粋に生きていて欲しかった、ただ純粋に生きたかった

愛している人だからこそ、私より長く生きていて欲しかった


…私は何時だってそうだ、なんで気がつけなかったんだろう

なんで、あそこで助けられなかったんだろう

誰よりも分かっていたと思ってたのに、誰よりも近くに居たと思っていたのに

なんでばっかりが頭の中を支配する


どうして、あの時、彼女の傍に居られなかったんだろう


××


夕暮れ時、海岸線近くに影が5つあった

1つは私の、1つははるなんの、そして…あと3つは?


「君が風丸亜紀だな、我々と一緒に来てもらおうか」


見覚えのある大きい男の人が3人

こいつら、確かエイリア学園に賛同していた奴等だ

くそっ、こんな時にこいつらが来るだなんて

どうする、はるなんを連れて逃げるか?

ここからなら駅まで走って5分ぐらいの筈だ

だったら…


「1つ言っておくが、逃げる事は許さない…もし逃げた場合、確か君の後輩は宮坂君だったかな?」


「なっ、なんで宮坂を…」


一気に血の気が引いていく

なんでこいつらみやみーの名前を

まさか、こいつら…


「他にも松野君に半田君に染岡君、雷門サッカー部の一年生達…これの共通点はわかりやすういだろう?」


入院してる奴等だ…

皆エイリア学園との戦いで怪我してしまった奴等ばっか

まさかこいつ等…あいつらに更に怪我をさせるつもりじゃ


「それにそこに居る音無春奈とて同じだ、我々は何時だって君達に干渉できる」


っ、逃げるのは無理か

ここで逃げても…こいつ等なら他の所にも根回しなんて出来そうだし、それにはるなんの両親にすら手を出しかねない

…どうすれば


「ふむ、更に言えばあの円堂守だってそうだ、彼の手を再起不能にすることだって我々にはできる」


息が、吸えなくなる

円堂から…サッカーを奪う?


「もうわかっただろう、どうすればいいのか」


私がここで奴等に着いていけば…円堂はこれまでどおりサッカーができる?

円堂からサッカーを奪うなんてできない、アイツには最後まで笑っていて欲しいんだ

それだけじゃない、みやみーだって陸上ができるし、マックス達だってサッカーができる

そうだ、私が犠牲になれば、全て丸く収まるじゃないか


「…わかった」


「風丸さん!!」


はるなんが声を上げる

わかってるよ、こんなの本当は正しくなんか無いって

でも、これ以外にどうすればいい?

私たちはどうしたって子供だ、大人になんか勝てない


「よしっ、捕まえろ」


「キャァッ、な、何するんですか!!」


「は、はるなん!!」


アイツ等のうちの1人がはるなんを捕まえる

な、なんで


「はるなんを放せ!!抵抗なんかしないから!!」


「ダメだ、彼女は人質つれて行く」


そう言って私の事を地面に押さえつけ、エイリア学園のボールを取り出す


そんな、なんではるなんまで…

くそっ、ちくしょう…なんで、こんな奴等に…


男が地面にボールを落とす、地面に触れると同時に光だすボール、徐々に薄れていく周りの景色

全てがスローモーションに見えて、そして全て消えた

 




回帰


(そして物語は進んでいく)

(たくさんの後悔を乗せながら)

(どこまでも、進んでいく)

[ 23/98 ]

[*prev] [next#]




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -