第十八話

闇の中で、1人待ち続ける


××

夜、私は1人住宅街を歩いていた

と言っても、なんとなく散歩しているわけではない

れいちゃんが皆で晩御飯を食べてるときに言ってきたのだ


『夜の11時に、1人で住宅街に来て』


…どう考えても罠だけど、行かないわけにはいかなかった

後でどうなるかもわからないし

にしても、なんなんだろう…早くキャラバンに戻って寝たいんだけど…

しかも住宅街なんてアバウトすぎるし、一体どこに行けばいいんだよ

そんなわけで私は1人、住宅街をぶらぶらと歩いていた

にしても、こう歩いてみてわかったけど、住宅街ってこの時間帯になると結構暗いんだな

私はいっつもこの時間まで起きているから明るいもんだと思っていたけど、どうやらこっちでは通用しないらしい

うーん、どうしよう…流石にそろそろキャラバンに戻らないと、ひとみん監督に怒られるよね?

そう思い、来た道を戻ろうとしたときだった


「むぐっ!!」


いきなり後ろから口をふさがれて、無理やり路地裏へと引っ張られる

!!、何々?なんなの?

路地裏に連れ込まれ、壁に体を押し付けられる


「へぇ〜、結構可愛いじゃん」


「男かと思ったけど、女の子みたいだし、ラッキー」


目の前にはいかにもチャライ系の男がいた

金髪の男が私の顎を掴んで、グイッっと引っ張る


「なぁ、ここまできたら何されるかわかるだろ?」


「静かにしてくれよ〜、見られて困るのはお前もなんだからさ」


犯される―――

頭の中に一番最悪な、そんな単語が浮かんだ

私はなんとか平静を装って聞く


「っ…一応聞くけど、誰の差し金?」


「おっ、結構強気なんだ〜、可愛い」


「俺達今機嫌いいから教えてやるよ、確か…れいなんとかだっけ?」


…れいちゃんだ

まさか、ここまでやるだなんて…侮っていた

っ、早く、逃げないと!!


「…結構冷静そうだけどさ、何されるかわかってる?」


「おい、そんなんどうでもいいから早くヤろうぜ」


そう言ってもう1人の金髪が私のズボンを下ろそうとしてズボンに手を掛ける

荒い息遣いがすぐそこまで迫ってきていて気持ち悪い


やだ、やだやだやだ!!やだ、誰か、助けて


「可愛い〜、涙目になっちゃって」


「大丈夫だよ〜、すぐキモチヨクなるからさ」


下卑た笑い声が響く

やだ、こんな奴にハジメテを奪われるだなんて

金髪の奴が私の下着を脱がそうとすると、ゴッという鈍い音が路地裏に響いて、男の体が吹き飛ばされた


「ガッ、ァ」


「なっ、なんだよこれ」


サッカーボールがもう1人の男の顔面に当たる

そのままサッカーボールが連続で放たれてきて、男達は慌てて逃げていく


男達が居なくなったのを確認すると、体から力が抜けて路地裏に座り込む

たす、かった?

でも、一体誰が?


「ふぅ、何時も見てて思ってたけど、君は警戒心が無さ過ぎるよ」


通りの方から、綺麗な声が響く

さっきの男達とは違う、綺麗な金髪が風に靡いて、金色の粒子が飛んでいるように見える

その背中から生えている大きな白い翼は本当に神秘的だった


「まったく、僕が居なかったらどうするつもりだったんだい?」


「てる、みん?」


神様が、私を救ってくれた

××

公園に移動して、ベンチに座る

ベンチに座っても体の振るえが収まんなくて、必死に振るえを止まらせようとする

すると、てるみんが缶ジュースを差し出してきた


「オレンジジュースだよ、飲んだ方がいい」


言われたとおりにプルタブを開けて、グイッと一気オレンジジュースを飲む

口の中にオレンジ味が広がっていっておいしい

気がつくと全部飲んでしまっていた

飲み終わった缶を横において、ベンチに深く座る

まだ、体が震えている

怖かった…そう思っているとてるみんが突然後ろから私を抱きしめてきた


「っ、てる、みん?」


一瞬、体が固まってしまう


「君はやっぱり警戒心が無さ過ぎるね」


そう言って優しく私の頭を撫でて、優しく抱きしめる


「泣きなよ、ここなら誰の迷惑にもならない」


息が、吸えなくなったんだ

怖かった、すっごく怖かった

ハジメテをあんな奴等に奪われるなんて、嫌だった

触ってくる手がベタベタして、触られた部分が気持ち悪くて

怖かった、てるみんがこなかったら、どうなっていたか…想像するだけで嫌で


「ごめ、ごめんな、さい」


私を抱きしめる腕に、力が入る

怖かった、すっごく怖かったのにね………涙が出てこないの

1つも出てこない、凄く恐くて、心が締め付けられたのに


…なのに、涙が出てこないよ


「やだ、怖いよ…怖いよ」


何が恐いのかもわかんなくて、何が苦しくて、何が恐ろしいのかもわからない


「大丈夫、大丈夫だよ」


怖がる私をてるみんは優しく包み込んでくれた

震える手を掴んでくれた

優しく頭を撫でてくれた


「大丈夫、大丈夫だから」


視界が、一気に暗くなった


××

アフロディside

気絶してしまった彼女を抱きかかえて陽花戸中へと向かう

抱き上げた彼女は以外にも軽くて驚いてしまう


彼女はずっと震えたまま、結局、泣く事は無かった……

にしても、なんで彼女はあの時間帯にあんな所に居たんだ?

僕が居なかったら、どうなっていた事か

そんな事を考えていると陽花戸中の正門前にいつの間にか着いていた

そして正門前にちょうど円堂君が居るのを発見する


「やぁ、円堂君」


「アフロディ!!なんでここに」


円堂君が驚愕を顔に浮かべる

まぁ、確かに僕が此処に居るのは驚きだろう

理由としては、福岡は韓国に行くのに楽だからね、学校も休みだからこっちに来てただけなんだけど


「アフロディ、なんで、風丸」


僕の腕の中に居る風丸君を指差す

まぁ、普通は不思議に思うよね


「あぁ、ちょっとね」


?、どうしたんだろうか、なんだか円堂君が怒っている様に見える

まぁ、ちょうどいいや…円堂君に彼女を預けてしまおう


「それじゃ、僕はここら辺で帰るからこの子の事よろしくね」


そう言って抱きかかえていた彼女を円堂君に預ける

ふぅ、そろそろ夜の散歩でも再開するか、また彼女のような人が居ても困るしね

羽を広げ、空へと飛ぼうとする

あぁ、そうだ


「円堂君」


「なんだ?」


「大事な物はちゃんと見てないと…何時失うかわからないよ」


それだけを言って、空へと飛び立つ


じゃないと、今回みたいに…彼女が遠くに行ってしまうかもしれないよ?


神様も暇じゃないんだから




夜襲


(夜に響いた叫び声)


(夜に響かなかった泣き声)


(一体どちらが不幸なのか)

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