第十三話

あなたのお家はどこですか?


××


真帝国との戦いの後、私達はいったん稲妻町へと戻ってきた

雷門中へと着くと皆バラバラに行動し始める

…稲妻町か、何日ぶりだろう

宇宙人との戦いが始まって、色んな所回って…なんだか現実味がないなぁ、そう思った

私は家に着くと部屋へと戻り、着替えの補充などをする

お母さんはまだ仕事から帰ってきていない、いや、お母さんは基本夜遅くまで仕事する人だから居る方が基本めずらしいのだ

着替えの補充が終わったら冷蔵庫から適当に材料を取り出して昼ごはんを作る

時間を確認すると11時、集合時間は3時だからまだ十分に時間はある

私は冷蔵庫から冷ご飯を取り出して、オムライスでも作ることにした

…チクタクと時計の針ばかりが進んでいく、トントンとお肉を切る包丁の音が部屋に響く

お母さんが家に居ないのは、いつの間にか当たり前になっていた

別段、それを恨んだ事はない。母は何時だってその分私に愛情をくれた

でも、何時からだったろうか、母が働くようになったのは

小さい頃の記憶では母はいつも台所に立って、料理を作って、私と遊んでいてくれてた気がする

それは小さい頃の記憶の所為かもしれないが、母が働いていた記憶がない

それどころか、私にはつい最近の小学校の記憶が丸々無い

………なにかがおかしい、ずっと気づいていたけど、どこかに綻びがある

私にはなぜ昔の記憶が無い?小学校の頃私はどこにいた?なぜそれを思い出せない?

こんなにも幼稚園の頃の記憶は鮮明なのに、どうして?

私は、いったい、誰なんだ?


ピッーーーーーーー!!


ヤカンの音が部屋に響く

危ない危ない、お湯を沸かしていたんだっけ

…なんだか、考えていたのが馬鹿らしくなったな

過去の記憶が無いからってなんだっていうんだ、私は私だ

私は円堂守の幼馴染でイナズマイレブンの1人で風丸亜紀じゃないか

うん、そう考えてたら気持ちが軽くなってきた

にしてもこんなふうに考え事したの前世以来かも←

昔はよく亜美にもっと考えろって怒られたっけ、はは


「んー、よっし…がんばるぞー!!」


うん、とっととお昼食べてサッカーでもするか


ピンポーン


すると、突然玄関のチャイムの音が響く

?、こんな昼間から誰だ?勧誘か何かかな


「はーい、今出まーす」


玄関の扉を開けると、そこには


「よっ、風丸」


とうこんが居た



××



とりあえずとうこんを家に上げて一緒にお昼を食べる

…どうしたんだろう、集合まではまだ時間があるのに

そんな事を考えていると、とうこんが箸を置いてうつむく



「…どうしたんだ?」



「…なぁ、風丸、私―――」



キャラバン、抜けようかな


部屋の中の音が消える

一瞬、何を言っているのかわからなかった



「え、ぁ…抜けるって」


「パパに今回の事、言ったらキャラバン抜けろって言われた……私、わかんなくなっちゃった
サッカーは今でも好き、だから今回のキャラバンにだって参加した、でも―――玲姫がさ…
私、玲姫の考えがわかんない、なんであんな嘘ついたのかわかんない、私って玲姫と従姉妹同士だから、最初は大丈夫って思った

だけど、アイツにとって、従姉妹ですら邪魔な存在だったんだよ」


そこまで話して、とうこんは目に溜めていた涙をポロポロと流す


「パパにも全部言ったら、パパは信じてくれた、それで戻ってこいって…
最初はここで戻ったら負けだと思ったけど、でもいつまでもここに居るのも結構辛い
円堂達の事は好き、でも…あっちは私を嫌ってる、そんな中ですました顔できるほど、私は強くないんだ

ごめん、風丸…私、お前が私達の事守るって言ってくれてうれしかったよ」



とうこんはそう言って逃げるように私の家から出て行った

待ってと言おうと思ったが、ここでとうこんを引き止めてどうする?

とうこんにまだ辛い思いをさせるのか?

…ごめんね、とうこん、私は守ってあげられて無かったよ

だって、とうこんすっごく辛い顔してた


とうこん、私もね、強くないよ


今だって、友達が辛くて泣きそうな顔していたのに、何もできなかった

私は、今の状況を変えることすらできない偽善者なんだ


××


集合時間になって集合場所に行くと、そっきゅんが抜けることを伝えられた

真帝国との試合での怪我が原因らしい

…とうこんの事も伝えられたけど、マネージャーやのせとか以外は気にもしていなかった

………私、間違ってるかな

ここでマネージャーを置いていけば、彼女達が傷つくことはもう無い?

私は、



「…風丸」


のせに名前を呼ばれる



「…風丸、大丈夫だよ、たとえ間違っていても、俺も一緒に間違えてやるからさ」



そう言ってのせは背中を押してくれた

…そうだ、間違えていたっていいじゃないか

重要なのは、自分の心に嘘を付いていないかどうかなんだから



「…ありがとな、のせ」





帰郷


(その日、2人チームから居なくなった)

(その所為で少しだけ広くなったバスは)

(私達の状況を嘲笑っている様だった)

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