第十二話
嘘吐きはだぁれ?
××
禁断の技の原型、…つまりプロトタイプを作ったのは…
私?
「なっ、嘘を言うな!!俺はそんな技を作った覚えは無いぞ!!」
影山の方に向かって叫ぶ
あんな危ない技を作った覚えは私にはない
全身の筋肉を破壊しかねない技なんて…そんなの作ったこともないし、やらせた事も無い
「っ、どういうことだ風丸!!」
きーちゃんが私の胸倉を掴んで問いただしてくる
でも私だって意味がわからない
なんだって影山はあんな嘘を
「し、知らないっ、俺はあんな技を作った覚えはない!!」
「…ふんっ、覚えてないのか、まぁいい…精々足掻いて見せることだな」
そう言ってブツッっと切れた音がした
覚えていない?馬鹿を言うな、俺は覚えている
俺の記憶に、あんな技、作った覚えは…
××
雰囲気が最悪なまま、試合は後半戦を迎えてしまった
わからない、私はあんなの作っていない
なのに、自信がもてないのは、何故?
「よぉ、余所見してていいのかよ?」
考え事に没頭していたらいつのまにか真帝国の、不動だっけ?がいた
やばい、試合中に余所見するなんて
「…お前、仲間から見捨てられてるんだって?」
っ、見捨てられてる?
違う、そんなこと
「だったら、傷つけてもいいよなぁ」
口の両端を上げて怪しく笑うと、パスされてきたボールを私に向かってボールを蹴ろうとする
避けないと、危ない
こんな近距離から蹴られたら危ない
「ジャッジスルー!!」
私は、避けなかった
「うぁ、ぐっ」
「風丸君!!」
秋っちの悲痛な声が聞こえる
胃の中から色んな物が溢れそうになる
口の中が酸っぱい、でも直前でなんとか踏ん張る
「風丸先輩、なんで、よけな…」
「違うわ、避けられなかったのよ」
はるなんの疑問になつみんが答える
そう、避けられなかった
もしあそこで私が避けていたらボールはそのまま真っ直ぐ飛んでいき、私の直後ろにあったベンチへと飛んでいた
あそこで避けたら、はるなん達が…
「…へぇ、意外と甘ちゃんだったんだな」
「あぁそうだよ、知らなかったのか?人間は砂糖でできてるんだぜ?」
「おもしれぇ、その強がり、何時まで保つことができるかな?」
ボールが再び、不動にパスされた
××
ファンファンファン
遠くからパトカーや救急車の音がする
ボールを当てられ続けたお腹がすっごく痛い
…結局助けられなかった
あの後さっくーが皇帝ペンギン一号の3発目を蹴り、倒れた
試合は続行不可能になり、影山は潜水艇を爆破させて…いなくなった
死んだのかさえわからない、ただ海の底へと沈んでいった
…弱い、私は弱い
友達を助けることすら、私にはできなかった
「っ、ごめん、ごめんね、さっくー、げんちゃん」
助けられなくて、痛い思いをさせて
2人はあんなにも思いつめてたのに助けてあげられなくて
「風丸先輩!!こんな所にいたら……風丸、さん?」
はるなんが私の元へとやってくる
あはは、情けないところ見られちゃった
私の今の顔、すっごく情けないよね
「…はるなん、しょっぱいね」
「……海の近くですからね…皆さんの所に戻りましょ?ここにいたら風邪、ひいちゃいますよ」
しょっぱいね、口の中も心もしょっぱいよ
真帝国 後
(ごめんね、ごめんね)
(助けてあげられなくて)
(私は弱いよ)
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