第六話

あなた達は本物ですか?



××


現れたのはしーちゃんだった

夜のせいか、顔が分かりづらかったが、少したつと夜目に慣れたかしーちゃんだと確認できた

私はさすがに足を当てたままだとアレだったので、足を下ろす




「…どうしたんだ?こんな時間に外に居るなんて」



「それは僕のセリフでもあるんだけど」



「俺はちょっと風に当たりたくなってな」



私がそういうとしーちゃんは黙ってしまった

…にしてもこう近くで見るとしーちゃんって肌白いな、

女としては羨ましい限りだよ




「…君、玲姫ちゃんを苛めてるんだって?」



しばらく沈黙が続いたが、それを壊したのはしーちゃんだった

苛めてる、か…



「どうだろうな、苛めってのは苛められてるやつがそう感じたら苛めって事になるからな」



誰かが言ってた

苛められてる?と感じたら苛めだと、

それは、加害者が苛めてないと思っても、被害者がそう思ったら苛めは成立するという意味

彼女は、私に苛められてると感じたのだろうか?




「それは、苛めを認めるってことかな?」




「どうだろうな、俺としては苛めてないって思いたいんだけどな」




…玲姫は傷ついたのだろうか?

告白して、断られて

私は、本当に玲姫を苛めてないのだろうか?




「ともかく、唯1つわかるとすれば、俺ははるなん達の味方だって事だ」



「…そう、」



どれが嘘か、どれが本当か、

どこからが敵で、どこからが味方か、

境界線がたくさんあって、わかりづらいかもしれないけど、

それでも、自信をもって言えることが私ははるなん達の味方だって事だ




「だから、悪いけどお前がはるなん達を傷つけても無駄だぜ?俺が守りきってみせる」



「…ふぅん、さっき守れてなかったくせに」



「それもそうだな、それについては弁明しない、これから守りきって見せればいいことだからな」




やり返す、じゃなくて守る

やっぱり、円堂達は私の友達だから

ごめんね、はるなん、秋っち、なつみん、とうこん、のせ

こんなにも優柔不断な私で




「君って、最悪だね」



「あぁ、そうだな…わかってる」



「…君は、あの子に姿は似てるけど…中身は最悪だ」




知ってるよ、しーちゃん

私が最悪な人間だってことぐらい

最悪だから、みんなを守れなくて、でもって友達は傷つけたくないって言って、それが悪循環のようにぐるぐる回って、結局、全員が傷つく

でもね…それでも、私は皆が傷つく姿なんて見たくないんだよ




××


次の日、そっきゅんとしーちゃんが喧嘩した

理由としては、白恋と雷門の練習の仕方の違い

そっきゅんは遊びみたいな練習が受け入れられないらしい

一方、私はと言うと昨日倒れたこともあったので、今日は練習を休む事に

そっきゅん達がやわだとか言ってたけど、そんなのは気にしない

私としては、薬が効いてきたのか、頭痛もあまりしないので練習に参加したいのだが監督から許可が下りなかった

それ故暇人状態なのです。

皆はスノボとかやってて楽しいんだろうな、

あ、でもとうこんに悪い事したかも

とうこんはあの中一人で練習、なんて出来る筈もなく、はるなん達の手伝いをしてる

とうこんは気にするなとか言ってたけど、やっぱり、うちのせいだよね

あーあ、暇だ

のせもアッチで練習してるし、マネージャー達は一応ドリンクの用意してるし(全部玲姫の手柄にされてるけど)、監督はどっか行っちゃったし…

ちょいとどっか出かけるか

別に外出禁止とは言われてないし、近くのコンビニ行く程度なら問題ないだろう、

そう考えて私はベンチから立ち上がり、コンビニへと向かった




××



…迷った?←

いや、正確にはもう学校は目の前にある筈なのだが、雪があるせいで学校へと辿り着けない

どうしよう、雪かきなんて時間かかるし、他の道探している間にまた迷ったら嫌だしなぁ

雪壁の前でいつまでもウロウロとしている時だった




「…何してるの?」




声をかけられた

さすがに私も学習し、足を出す事はなかったが、一歩相手から引いて振り返る

赤、綺麗な赤色の髪、まずそれが目に入った

病的に白い肌は後ろにある雪よりも冷たい印象を受け、緑色の瞳は誰も逃さないような冷たい感じがした

さっきまで、誰も後ろに居なかったはずなのに、最初からそこに居たかのように彼はそこにいた

だから当然、私の口からでる次の言葉は



「…誰?」



だった、




「あぁ、ごめんごめん、俺の名前はヒロト…よろしくね?」



そう言って手を差し出された

ヒロト、かぁ…地元の子なのかな、

にしても美人さんだな、将来可愛い子になる事が期待できる子だよ←



「あぁ、よろしく…」



さすがに手を差し出されて返さないのは失礼だと思い、手を握る

相手の手は死んでるんじゃないかって位冷たかったが、よく考えればここは北海道

手袋もしないで外に出ていればそりゃ冷たくもなる




「で、こんな所で何してたの?」




こんな所、

それもそうだ、目の前には雪壁しかない所でウロウロしてたら唯の不審者にしか見えない

そう考えると今まで自分がしていた行動が恥ずかしく思えてきた




「いや、あの…白恋中に帰りたいんだけど…道がわからなくて」



「えっ?あぁ、白恋中ね」



少しだけ驚いた顔をされたが、すぐに笑顔へと戻り私の手を握って

…え?なんで握って




「案内してあげる」




そう言って彼は私を引きずるようなか形で案内を始めた

どうやら白恋中に帰れるみたいだ

…にしてもこの子、白恋中の生徒なのかな?

白恋中の場所知ってるみたいだし、ここら辺の子供だと思うし、

不思議な子だなぁ…




××



白恋中には以外にもすぐついた

簡単な話、私は白恋中の裏門でうろうろしていたわけで、反対方向へと進んでいけば、簡単に正門へとついたのである




「はい、ついたよ」



「あ、あぁ、ありがとう」



現在時刻、午後4時

ちょうど練習が終わり始める時間だろう

北海道は日が沈むのが早いので遠くの空はもう黒くなっていた



「それじゃ、僕は行くね」



「えっ、あぁ、ありがとうな…ヒーちゃん!!」



即効で思いついた渾名を呼びながら後ろを振り返ると、そこには誰も居なかった

…あれ?

さっきまで、居た、よね?




「えぇぇぇぇぇぇ!!」




まさか、幽霊?







宇宙人



(ピピピピピ、あなたは宇宙人ですか?)



(それとも幽霊だったのですか?)



(それとも―――)

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