I wanna be with you


聞きたいことはたくさんあって、伝えたいこともたくさんあった。でも今はそんなことより、この手を離したくない。
人目もはばからずいい大人が抱き合って、ついでにキスなんかしちゃって。二人見つめあって恥ずかしくなって笑った。

「あれだ、とりあえず一つだけ確認させてくれ」

「銀時と付き合ってないよ」

「名前で呼んでんのかよ」

十四郎が私を睨む。だけれど先ほどとは違い嫌な感じはしなかった。

「私も一つだけ聞きたい」

「…それは後ででいいだろう」

「まだなにも聞いてないよ」

「聞かなくても分かるわ、あとで答えてやるから」

今は茶でも煎れてくれねえか。
照れたように頭をかく十四郎が愛しい。家に上がる文句が幼稚なのもいい。二人手を繋ぐことなく家に帰った。上がるなり十四郎がキスをしてきて、私はまた泣きたくなった。もうないと思っていたことが現実になった。それだけでもう、死んでもいいなんて。

「仕事の途中だったんじゃないの」

「最近は暇が多いんだよ」

「十四郎にも暇なんてあるんだね」

「やることなくて結局仕事しちまうけどな」

仕事休みでやることなくて結局仕事をしてしまうなんて、根っからの仕事人間らしい。玄関で靴も脱がず抱き合って唇を合わす。何度も何度もキスをした。

「十四郎、お茶は?」

「あとででいい」

「じゃあシャワー浴びさせて、汗かいてるかも」

「あとで一緒に浴びりゃいいだろ」

「…知らない人みたい」

私の知っている十四郎は、こんなにがっつかない。私の知っている十四郎はいつも涼しい顔してスマートにものを運んで、こんな切羽詰まったようなキスはしなかった。

「余裕ない十四郎初めて見る」

「いつだって余裕なんかねえよ」

「嘘、いっつも十四郎は余裕で私ばっかり焦ってた」

「ならお前は俺のことちゃんと分かってねえな」

俺はお前の方が余裕に見えてたよ、と言った十四郎がふっと笑う。そして「俺たちどっちも何も見えてねえのな」と言った。十四郎は私の髪におでこに頬にと兎に角キスをして、何だかすごく大事に思われてるようだった。くすぐったくて恥ずかしくて、それでいて幸せで。

「布団、布団行こう」

私も十四郎の頬に首に耳にキスをした。好き好き好き。好きが溢れてどうしようもない。

「なまえ、うちの近くに越せよ」

「え?」

「目離すとなにがあるかわかんねえから」

「なにがって、」

「あとで説明すんから考えとけ」

とりあえず今はー…
十四郎に抱かれるのは初めてじゃないのに緊張して、触れられるところすべてが性感帯のように反応した。例えば撫でられた背中だとか足だとか。ただ十四郎の手が滑るように私を撫でるだけで身体がピクンと反応する。それを十四郎は真剣な目で見るから余計に興奮した。挿入の方が長い銀時と違って十四郎は前戯が長かった。もういいってくらいほどされ私は生まれて初めてもう挿れてなんてはしたない事を言った。

「誰に仕込まれてんだよ」

「十四郎以外いないでしょ」

「どうだかな」

「ずっと十四郎にまた抱かれたいと思ってたもん」

「そりゃ奇遇だ」

入り口にそれを当てがった十四郎が私を見下ろす。早く欲しくて腰が浮いた。

「次は別れる別れねえの前に改善にむけての話をしろよ、身が持たねえ」

「わかっあっ、んんっ」

返事をしようとしたのに十四郎が挿れるから上手く言葉にならなかった。突かれた振動で声が震えて出る。何かを考えていたはずなのに頭の中が行為でいっぱいになってなにを考えていたのかわからなくなった。えっと、えっと、なんだっけ。

「さっきのことだけど、」

「んっ、な、なにっ」

「俺だって最初からちゃんと好きだった」

切なそうな顔でそんな目で、そんなことを言われれば快楽が増した。私はなにも答えられず喘いだ。もう気持ち良すぎてなにも考えられない。だからとりあえず全部全部これが終わったら話してほしい。一つだけ確かなことは私は十四郎の側にまた居られるらしい。ならもうなんでもいい、全部後回しでいい。私たちはこの後合計三回行為をし、そのまま疲れて寝てしまった。翌朝トーストを食べながら十四郎はなんでもないことのように「早めに籍入れとかねえと墓が別々になる」と縁起でもないことを言い出した。その意味を説明されて私は、半年間の片思いに終止符を打った。終